07年度予算は、安倍晋三内閣が誕生して、最初に成立した予算であることから、安倍内閣の意向を反映したものとみなせる。この予算に基づいて安倍内閣の性格を判断してみる。
拡大した予算規模
まず、確認しておかなければならないことは、前年度の06年度予算の規模は、79兆6860億円であり、80兆円を下回ったことである。一般歳出は、46兆3660億円であり、05年度から2年連続で削減されていた。このように、前年度予算は、歳出の削減が本格化された予算であった。それに比べると、07年度予算は、予算規模が再び80兆円台に戻ることにより、歳出削減が後退した。一般歳出についても、わずかとはいえ増加している。
義務的な支出が含まれる一般会計の規模については、歳出の削減が困難な場合があるため、一概に歳出削減が行われていないとはいえない。しかし、政府の意思で自由に操作できる一般歳出については、歳出削減の意思があれば、削減の実現は可能である。
もちろん、高齢化の進展による社会保障支出の自然増があるので、その分を割り引いて考える必要がある。しかし、それでも歳出削減を優先するのであれば、削減を進めることは、困難とはいえ可能であろう。
歳出増加の背景
安倍内閣の予算規模拡大の決定に影響した最大のものは、税収が大幅に伸びたことであろう。前年度の当初予算での税収額は、45兆8780億円であったのに対し、07年度の税収予測は53兆4670億円になっている。約7兆6000億円の税収の増加である。これだけの税収の増加が見込まれるのであれば、その一部を歳出の増加にまわすことも可能になる。
特に、前の小泉純一郎内閣の下では、厳しい歳出削減が行われており、国会議員や地方自治体の間では、政府の歳出削減に対して不満が蓄積していた。その不満に多少配慮することによって、政権の基盤を守ろうという判断が働いたかもしれない。もし、そうであれば、安倍内閣は、歳出削減よりも歳出・歳入のバランスを優先させたといえよう。
しかし、税収が大幅に増加しているのだから、歳出削減を無理やり行う必要はないのではないかという判断は、過去に失敗した例がある。
それは、税収が大幅に増えたバブルの時代のことで、借金となる赤字国債の発行額をゼロにすることには成功したが、税収が増加しているのだから、歳出を増加させても問題はないはずだという意見に従い、歳出規模を増加させてしまったことである。バブルが崩壊すると、税収が大幅に減少したにもかかわらず、歳出規模が増加していたために、財政赤字が巨額になってしまい、その後長く財政赤字に苦しむ原因となった。
したがって、今回の好況による税収の大幅な増加に安住し、歳出規模を拡大させてしまうと、税収が落ち込んだときに、再び財政赤字が一気に拡大する可能性がある。
遠のいた財政再建
07年度予算では、税収が増加することは予測できるが、歳出規模が依然として極めて高いことから、差し引きすると大幅赤字になる。その分をまかなうため、依然として国債の発行は続けられている。今年度予算での国債の発行総額は、25兆4320億円である。しかも、公共事業はかなり縮小されているので、建設国債(5兆2310億円)の発行は少なく、大部分は赤字国債(20兆2010億円)である。一般会計に対する国債発行額の比率(公債依存度)は、30.7%であり、きわめて高い水準といえる。したがって、歳出削減を大幅に進めない限り、財政赤字の解消は困難である。
このような時期に、わずかとはいえ財政規模を拡大することは、将来に禍根を残す可能性が高い。やはり、財政再建を優先するのであれば、歳出規模の拡大は避けるべきであったであろう。