迷走のなかで得た成果
民主党政権はマニフェスト(政権公約)が武器でもあり足かせでもある。10年度予算案の編成では、マニフェストを盛り込むため難行苦行を強いられた。ガソリン税の暫定税率の維持など、公約違反すれすれの政策も盛り込んで、辛うじて年内編成にこぎつけた。この間、世論の高い評価を得たのは、事業仕分けによる予算の無駄の摘出。総額1兆円の無駄を見つけたのは、初めての試みとしてはそれなりの成果だろう。自由民主党側にさえ、「なんで自民党時代にやらなんだんや」(谷川秀善参院幹事長)との声があるほどだ。
年明けの通常国会審議では、鳩山首相と民主党の小沢一郎幹事長の「政治とカネ」をめぐる問題が政権の重荷となった。内閣支持率低下の大きな原因でもある。途中、自民党の審議拒否があったものの、10年度予算は3月25日、年度内に成立した。ここは予算成立が大幅に遅れた細川政権時代とは大きく異なる点だ。
予算関連の重要法案である、子ども手当支給法や高校授業料の無償化法は、野党である公明党の賛成も得て成立させた。民・公連携を象徴するようなやり取りがあったのが2月17日の党首討論。公明党の山口那津男代表が、企業献金禁止などについて与野党協議機関の設置を提唱したのに対し、鳩山首相は「賛成したい。大いに進めていこう」と直ちに応じたのだ。
普天間問題が最大の試練
当面、政権の命運を左右する最大の試金石が普天間基地移設問題。鳩山首相が選挙前から「できれば国外、最低でも県外」と発言して、沖縄県辺野古沖へ移転するとの現行の日米合意案を否定。沖縄県民の基地撤去への期待を盛り上げてしまい、悪戦苦闘している。鳩山首相は再三「5月末の決着」を表明。それから逆算して3月中に政府案の一本化が求められていた。3月23日、首相を含む関係閣僚協議が開かれ、(1)キャンプ・シュワブ陸上案、(2)ホワイトビーチ沖案の2段階案を軸に、鹿児島県徳之島に訓練機能を移す案でアメリカ側と折衝することになった。
岡田克也外相は3月29日、訪米してゲーツ国防、クリントン国務両長官に説明したが、アメリカ側の反応はいま一つ。アメリカ側は、日本国内で合意された案でなければ検討に値しないとの基本姿勢。沖縄県民から総反発をくっている案を交渉のテーブルに上げることさえ難しい状況だ。
とても決着できそうな雲行きではない。交渉決裂となれば、普天間基地の現状維持という最悪の事態もあり得る。もっとも、自民党も1996年の日米合意から14年間、決着させられなかったという負い目がある。それほどに重い課題であることを想起しておくことも大事だ。
「政治とカネ」のけじめが必要
政権担当から半年間で、内閣支持率は発足当初の72.0%から、3月時点では36.3%に急落(共同通信世論調査)。これが政権の求心力を削いでいる。歴代政権に比べても落ち込み度は大きい。その根底に「政治とカネ」の問題があることは誰の目にも明らかだ。党内で批判の声を上げた生方幸夫副幹事長に対し、民主党執行部は3月18日、事実上の副幹事長解任を決めたが、世論の風向きを察知して同23日には撤回する右往左往ぶりだ。
民主党に追い打ちをかけるように、小林千代美衆院議員の選挙運動に絡んで、北海道教職員組合幹部が同22日、不正資金提供の疑いで逮捕された。二重苦が三重苦になり、支持率が下げ止まらない。「政治とカネ」の問題で何らかのけじめが必要だ。
このままでは参議院選挙への逆風となるのは間違いない。そこで小沢幹事長に対しては5月連休後、参院選への影響を考えて自主的に幹事長を辞任するのではないか、との観測ないし期待があるが、本人の心境は不明だ。
鳩山政権としては、4月下旬から始める独立行政法人・公益法人に対する事業仕分け第2弾で巻き返しを図りたい考えだ。年金改革の骨格も5、6月に青写真を示すとしている。経済成長戦略や中期財政フレームなど、民主党が弱い経済政策策定の節目も5月に訪れる。鳩山政権にとっては、政権の存続そのものを試される重要な時期にさしかかった。