薔薇マークキャンペーンとは何か
2019年1月、統一地方選挙と参議院選挙に向け、「薔薇マークキャンペーン」と題する選挙キャンペーンを立ち上げました。これから行われる選挙の候補者に、「反緊縮・財政出動の経済政策 」を掲げるよう呼びかけるとともに、賛同してくれた候補者には政党を問わず「薔薇マーク」を認定。有権者が投票する際の参考にしてもらおうというものです。
研究者を中心に24名(発足時は22名)以上に呼びかけ人に加わっていただき、2月に東京で、3月に大阪でキックオフ記者会見を開催。いくつかのメディアが取り上げてくれたこともあって、思った以上の反響がありました。自薦・他薦を問わず申請をいただいた予定候補者の中から、キャンペーンの認定基準に照らして審査を行い、4月8日時点で55名が「薔薇マーク」認定立候補者(予定も含む)となっています。
「薔薇マーク」認定の基準は、おおむね以下の内容を満たす経済政策を掲げていることです。
- 消費税の10%増税凍結。(むしろ景気対策として5%に減税することを掲げるのが望ましい。ただしこれは認定条件ではない)
- 人々の生活健全化を第一に、社会保障・医療・介護・保育・教育・防災への大胆な財政出動を行い、それによって経済を底上げして、質の良い雇用を大量に創出する。(国政候補は「大量失業が続く不況時代には二度と戻さない」と掲げることが望ましい)
- 最低賃金を引き上げ、労働基準を強化して長時間労働や賃金抑制を強制する企業を根絶し、人権侵害を引き起こしている外国人技能実習制度は廃止する。
- 大企業・富裕層の課税強化(所得税、法人税等)など、「力」の強弱に応じた「公正」な税制度を実現する。
- (4.)の増税が実現するまでの間、(2.)の支出のために、国債を発行してなるべく低コストで資金調達することと矛盾する政策方針を掲げない。
- 公共インフラのいっそうの充実を図るとともに、公費による運営を堅持する。
一言で言うならば、消費税増税ではなく大企業や富裕層に応分の負担を課す一方、教育や福祉、介護など生活に直結する分野に、直ちに大胆に公金を投入して人々の生活を底上げしていくというものです(詳しくは、薔薇マークキャンペーンのホームページ などをご覧ください)。こうした「反緊縮・財政出動」経済政策の方向性は今、ヨーロッパ左派の間で急速に広がっています。
「アベノミクス」に対抗できる経済政策を
日本では10数年前から、「財政規律」「1000兆円を超える借金は大変」といった言葉の下で、極端に公的支出を抑える緊縮財政政策が推し進められてきました。私は、民主党政権の頃からこれに強く反対し、むしろデフレ脱却のためにも福祉・教育分野を中心にどんどん公的支出を拡大するべきだと主張してきました。2010年に出版した『不況は人災です! みんなで元気になる経済学・入門』(筑摩書房)という本でも、そうした内容を書いています。
しかし、政府の方向性は変わりませんでした。そんな中、12年に自民党総裁に再任した安倍晋三氏は、「景気回復」「デフレ脱却」を強調し、経済政策の充実を前面に掲げます。選挙に勝つためには、とにかく景気を少しでもよくすること、経済政策を打ち出すことが一番効果があると分かっていたのでしょう。
私は、これは国民的な支持を得るだろうと思いましたし、実際にそうなりました。自民党は12年末の選挙で大勝して政権に復帰。安倍首相は「大胆な金融緩和」「財政出動」などを柱とする経済政策「アベノミクス」を発表しました。そして、その「成果」を訴えた翌年夏の参院選では、再び自民・公明の与党が圧勝し、衆参両院で与党が過半数を占めることになります。
ご存じのとおり、安倍さんは祖父の代からの悲願である「憲法改正」に、強い意欲を燃やし続けている政治家です。かつてナチスドイツは、経済政策で人々の支持を盤石(ばんじゃく)にし、そこから戦争に突き進んでいきましたが、このままでは日本でも同じようなことが起こってしまうのではないか──。私はそんな危機感を抱き、「安倍政権に対抗できる、アベノミクスを超える経済政策を提示しなくてはダメだ」と発言するようになりました。
しかし当初、安倍政権に批判的な、いわゆる「左派」の人たちの見解は、ほとんどが「アベノミクスなんて1~2年で破綻する」というもの。安倍政権の経済政策による一定の効果が、政権を支持する世論をもたらす――このような仕組みを分析して、野党側の作戦として「対抗できる経済政策をつくるべき」とする私の主張は、「アベノミクスを肯定するものだ」との批判も受けました。
サンダース派
バーモント州選出のアメリカ上院議員である、バーニー・サンダースを支持する人々。