「財団」方式であっても、被告企業が相応の金額を拠出し、これら企業と日本政府が真摯な謝罪の姿勢を示すことで、深い苦しみを抱いてきた被害者の思いに向き合わなければ、本当の解決にはなりません。
また、強制労働をさせられた「徴用工」は、今回の裁判の原告だけではありません。もし、その一人一人が同様の裁判を行わなくてはならないとすれば、高齢の元「徴用工」たちにとっても、訴えられる企業にとっても負担が大きすぎます。日韓両国政府と企業等が「財団」に資金を拠出し、「財団」が一括して救済することが、望ましい方向でしょう。
今回の原告の一人、李春植(イ・チュンシク)さんは「生きているうちに問題が解決することを望む」と言い、梁錦徳(ヤン・クムドク)さんは「私は日本から謝罪を受けるまでは死んでも死に切れません」と述べています。
どのような方式であれ、被害者たちの思いを汲み、それに反しない解決こそが、日韓両政府と企業に求められています。様々な障害を越えて、それを実現できるのか。それこそが、「徴用工」問題をめぐる動きを見ていく上で、最も重要なポイントだと、私は思います。
(注1)
内務省嘱託小暮泰用より内務省管理局長竹内徳治宛「復命書」。アジア歴史資料センター所蔵(https://www.jacar.archives.go.jp/das/meta/B02031286700)。ネットではこちらでも紹介されている。サイト「『徴用工』問題を考えるために」内「夜襲的動員」(https://note.com/katazuketai7/n/n28c1a40d29dd)。
(注2)
大蔵省官房調査課金融財政事情研究会、水田直昌述『終戦前後の朝鮮経済事情』東京大学所蔵(https://opac.dl.itc.u-tokyo.ac.jp/opac/opac_details/?reqCode=fromlist&lang=0&amode=11&bibid=2001554374&opkey=B167116921736348&start=1&totalnum=2&listnum=0&place=&list_disp=20&list_sort=6&cmode=0&chk_st=0&check=00)。ネットではこちらでも紹介されている。サイト「『徴用工』問題を考えるために」内「総督府幹部『トラックで村からしょっぴいた』」(https://note.com/katazuketai7/n/n98fb10310bd4?magazine_key=m564e2cc578f0)。
(注3)
『潮』1971年9月号「日本人の朝鮮人に対する虐待と差別―日本人100人の証言と告白」(潮出版社)。ネットではこちらでも紹介されている。サイト「『徴用工』問題を考えるために」内「朝鮮総督府嘱託が語る『人狩り』」(https://note.com/katazuketai7/n/nf51ef0725622)。
(注4)
朝鮮人の戦時労務動員の実態については、以下のサイトで様々な資料や証言を読むことができる。「『徴用工』問題を考えるために」内「史実にアクセス」https://note.com/katazuketai7