がん患者の心の痛みは治せるか? 死と向き合うがん哲学外来の試み 山田圭輔 (金沢大学附属病院麻酔科蘇生科講師) 2014/07/25 「死を想え」という言葉は、ラテン語では「メメント・モリ(memento mori)」といい、昔から世界中で使われている。死は特別のことではないと謙虚に認識することができれば、残された時間を勇気を持って生きる覚悟を持つことができる。 私は医師として、がんで死亡する多くの人を診てきた。死を前にした苦境の中で、人がスピリチュアルペインに圧倒されずに、死ぬまで精神次元の能力を忘れずに生ききること自体が、シンプルであるが大変に価値のあることと実感している。患者との対話の最後に、そのことも伝えるようにしている。 がん哲学外来の効果があったかどうかは、患者が自分自身の精神次元を再認識し、自分自身で心の苦痛に対処する勇気を持てるかどうかである。明るい笑顔で帰る方が、実際に多い。 1 2