★江戸川区
羽田空港への離発着について、現在は「海から入り海に出る」と書いたが、じつは東京都の東端の江戸川区では、「南風の悪天候時」に限り「陸から」入っている。飛行高度は約600メートルで、騒音は70㏈前後。その飛来日数は2017年度で62日、飛来機数は4853機を数える(江戸川区「航空機騒音の調整結果」から)。
「航空機の都心低空飛行に反対する江戸川区民の会」の大田美音(みね)代表は「区の飛行問題は始末が悪い」と語る。
「区の上空をいつ飛ぶかは天候次第だから、区民は事前に飛行計画を知ることができない。窓を開けていれば、前触れもなく『テレビが聞こえなくなる』騒音が飛び込んできます」
これに加えて、前述のとおり、新ルートでは、「北風」時に「7時から11時半の4時間半」と「15時から19時の4時間のうちの3時間」を、C滑走路から1時間あたり23便(1日約173便)が江東区や江戸川区の上空を通って北上する。江戸川区では北風は年間を通じて約6割(約219日)も吹くことから、新ルート導入で、単純計算でも離発着便の合計は約4万5000機と現状の7倍以上になり、多くの区民が苦情を訴えるはずだ。
「でも問題は、報道されないので、区民が計画を知らないこと。新ルートが運用されてから騒いでも遅いんです」
「江戸川区民の会」では、チラシまき、集会、デモなど、できる限りの手段で周知に努めるという。
残る手続き
オープンハウス型であれ教室型であれ、国交省による説明会は今春で終わる予定だ。その後、新ルート運用にはどのような手続きが残されているのか。
取材で出会った住民が、一様に訴えるのは以下のことだ。「国交省は最新の飛行機は低騒音型だと説明します。ならば、ルートで実際の飛行機でのテスト飛行をやってほしい。どの程度の騒音か一発でわかりますから」
私は、国土交通省航空局航空ネットワーク部環境・地域振興課に電話を入れた。
――実際の騒音を確認するためのテスト飛行は行わないのですか?
「新ルートを飛行するには、ルート上に航空無線施設を設置しなければなりません。2020年春くらいまでかかります」
――設置後、大型機でのテスト飛行をするのですか?
「まず小型機を飛ばし、管制塔の電波を受信できるか、のテストは行いますが、大型機での予定はまだ……」
国交省はテスト飛行をやるともやらないとも言わなかった。
さらに尋ねたのは住民の意思をどう反映するかだ。じつは16年7月、国交省内の「第4回首都圏空港機能強化の具体化に向けた協議会」で新ルートに係る関係自治体は計画に基本合意している。ただし、東京23区から参加したのは荒川区長だけで、さらに、この協議会の前後から、東京23区で計画に疑問を呈する市民団体が続々と立ち上がった。市民団体は、デモやチラシ配布、計画変更を求める署名や議会への陳情などを繰り返しているが、この民意は無視できるだろうか。
――今後、新たな区議会や区長の承認は必要ですか?
「不要です。16年の協議会では、荒川区長は23区の代表として参加しましたので」
――あとはどんな手続きが必要ですか?
「国が出す航空路誌(AIP)に必要な恒久的情報を収録する必要があります。そこに新ルート情報を東京オリンピックまでには収録したいです」
つまり、あとは国側の手続きだけということだ。市民団体は、早ければ今秋にも運用が始まると予測している。だが、「守る会」(前出)の増間さんは「諦めない」と強調する。
「これまでの継続的な活動で、徐々に住民間での問題意識が広がっています。もっと周知が進むと、自治体や国も無視できないと思うんです」
現在、東京23区のうち13区でこの件に関する市民団体が設立されたが、マスコミがほとんど報道しないだけに、どの市民団体も必死だ。読者の中にも飛行ルート直下に住む人がいるはずだ。ぜひ関心を持っていただきたい。
*国土交通省 「羽田空港のこれから」(外部リンクに接続します)
*「みなとの空を守る会」HP(外部リンクに接続します)
*羽田増便による都心低空飛行ルートに反対する品川区民の会公式サイト(外部リンクに接続します)
*羽田空港増便問題を考える会 (外部リンクに接続します)