世界的に有名な労協としては、スペイン・バスク州のモンドラゴン協同組合企業体があります。金融・工業・小売などの領域で8万人以上の就労者がいます。イタリアも労協が盛んな国の一つですが、1985年に労働者が倒産企業を買い取り労協へと転換することを支援する法律(マルコーラ法)も制定され、91年には障害者など社会的に不利な立場の人たちに雇用・サービスを提供する社会的協同組合に関する法律が制定されるなど、労協が様々な地域の課題解決に役立っています。
資本主義大国アメリカでも、カリフォルニア州を中心に労協は広がっています。労協が経営しているパン屋やピザ屋、食料雑貨店などが地域で人気のお店になっています。アメリカでは州法で労協が規定されており、やはり法律に基づいて設立されています。
3.労協法に規定された労働者協同組合の特徴
●設立の目的
労協法は、「生活との調和を保ちつつその意欲及び能力に応じて就労する機会」が確保されていない社会の現状に対して、「多様な就労の機会」の創出と地域に必要とされる事業を促進することを直接的な目的としています。さらに究極の目的として、「持続可能で活力ある地域社会」を実現することを掲げています(第1条)。
●基本的な仕組み(3つの原則)
第1条には労協の基本原理として、①組合員が出資、②組合員それぞれの意見を反映した事業運営、③組合員が事業に従事、という3点が記されています。
① 組合員が出資
前述したように、労協では、組合員となって働くために組合に出資する必要があります。どんな事業であっても元手となる資金が必要ですが、そのお金は誰が出しているのでしょうか? 株式会社であれば株主ですね。一方、協同組合では組合員が資金を出し合います。労協では、外部から資金を調達するのではなく、組合員である労働者が資金を持ち寄る、つまり「自力」で、が基本となります。だからこそ自主的・自律的な事業経営が可能となるわけです。
株式会社では、外部の投資家(株主)に資金を頼れば、株主の意向に沿った事業経営を余儀なくされます。株式会社は株主のものであるというのが一般的な考え方です。
労協が自立した組織であるためには、この出資が最も重要なポイントになります。もちろん、足りない資金を金融機関などから借り入れることは可能ですが、健全経営のためには高い自己資本比率が必要であると考えられます。
NPO法人との大きな違いも、この出資の可否にあります。NPOは出資そのものが禁じられているために、資金を会費、寄付金、助成金などに頼らなければなりません。そのため財政基盤が脆弱で持続的な事業経営が難しい、といった弱点があります。
② 組合員の意見を反映した事業運営
組合員の意見を反映した事業運営とは、「組合員全員が参加して民主的に事業を行う」ことです。株式会社でも会議などで部下の意見を聞くことはあると思いますが、経営レベルのことについて、いちいち社員の意見を聞く会社はないはずです。
労協では、組合員一人ひとりの意見反映の方法を定款に明記しなければなりません。また、1年間の意見反映の成果を総会で組合員に報告することが理事会に義務付けられています。さらに、組合員の意思により代表理事(使用者)を選ぶことも定められています。これは、「社員の合意により社長を選ぶ」ようなスタイルと言えますね。
他の協同組合と同様に、労協では組合員に一人一票の議決権及び選挙権が保障されています。事業経営に関わる意思決定についても、全組合員が同等の権利を持っているので、労協の働く現場では組合員による「話し合い」を基本にした民主的な事業運営を行わざるを得ません。
③ 組合員が事業に従事
労協の組合員になるには、「組合の事業に従事すること」が基本的な要件であり、働かずに出資するだけの組合員や、組合が行う事業(例えば、介護や保育サービスなど)を利用するだけの組合員は原則的に存在できません。
生協では、組合員は消費者(生協の利用者)であり、一方、生協で働く職員は必ずしも組合員ではありません。労協では、「労働者=組合員」となります。もちろん、病気や怪我、産休・育休、親の介護など何らかの事情により一時的に働けなくなった人が、すぐに組合員資格を失ったりはしません。労働契約が継続していれば従事者として認められます。
●労働契約の締結
労協法第20条に、「組合は、その行う事業に従事する組合員との間で、労働契約を締結しなければならない」と定められています。専任の理事と監事は除外されますが、それ以外の組合員は全員労働契約を締結して、労働者として労働法の適用を受けます。労働基準法、労働組合法、労働関係調整法などが適用され、社会保険(健康保険、厚生年金保険、介護保険、雇用保険、労災保険)にも加入します。
労協の働き方「協同労働」を「雇われない働き方」と表現して、「雇用労働」と対比させる記述を目にすることがあります。しかし、組合との間で労働契約を締結する以上、法律上は雇用関係(労使関係)が存在することになります。
また、「労協の組合員は主体的に働いているのだから、労基法違反の長時間労働や最低賃金以下の労働が許されるのでは?」という誤解があり、労協法はブラック企業に悪用されるのではないかという懸念を耳にしますが、法律に則り運用される限りそのような心配は無用です。
●設立は準則主義で。組合員は3人から
BDF
BDFは、てんぷら油などの植物性の廃食油を再生して作るカーボン・ニュートラルの燃料です。ディーゼルエンジンの自動車を走らせることができ、ドイツを中心に欧州諸国で広く利用されています。