それは裏を返せば、軍事や経済ばかりが優先されがちなこの社会構造に男性はどうしても取り込まれてしまっていて、声をあげづらいということ。そういう社会だということがここで浮き彫りになっているんじゃないかと感じました。だから、この映画には男性たちに向けた「目を覚ませ、命や人権以上に大事なものなんてないよ」というメッセージも込めているんです。
――福島第一原発事故の後、放射能汚染の問題に対して立ち上がったのも女性が多かったように思います。
平良 女性はもちろん「産む性」だということもあるでしょうし、社会構造やしがらみにとらわれず「まずは命が大事でしょう」とはっきり言える自由さがある気がしますね。それを強みにして、「ウナイ」パワーで少しでもこの状況を変えていけたらいいなと思っています。
――PFAS汚染について少し知れば「おかしいよね、なんとかしなきゃ」と思う人は多いのではないでしょうか。
平良 はい。少しでも「何かおかしいことが起きている」と気付いて、調べて、行動を起こす第一歩にしてほしいというのが、この映画を作った最大の目的です。これだけ未曾有の汚染問題ですから、知れば知るほど無力感を抱くこともあるかもしれませんが、問題に立ち向かう女性たちの姿からは、「私たちは無力じゃない」ということをきっと感じてもらえると思います。「あきらめるより、声をあげましょう」と言いたいですね。
――ちなみに、監督は沖縄のご出身ですね。2024年にはテレビ局を退職、制作会社を設立されましたが、今後も沖縄の問題を追いかけていかれるのでしょうか。
平良 そうですね。こういう言い方はおこがましいかもしれませんが、もともと私は「沖縄のこと」をやるためにこの仕事をしてきたようなところがあります。沖縄は、「自分たちが声をあげないと人権がないがしろにされる」という感覚が、脈々と受け継がれている場所だと思うんです。おかしいと思うこと、嫌なことがあったら市民がちゃんと声をあげてアクションを起こす。その姿を追いかけて物語を紡いでいけるのは、メディアとしてもとても幸せなことだと感じるし、今後もそこにこだわり続けたいと思っています。
8/16(土)よりポレポレ東中野ほか全国順次公開