なぜ、地球は温暖化しつつあるのか?
地球の気候は、地球にもたらされる太陽エネルギーと地球から出ていくエネルギーとのバランスで決まっている。入ってくるエネルギーが出てゆくエネルギーより大きくなれば、地球表面の温度は上昇し、やがて、地球から出てゆくエネルギーが増加して釣り合うようになる。このようなエネルギーのバランスから地球の温度を計算してみると、もし地球に空気がないと仮定すれば、-20℃程度になる。しかし現実の気候値は、約15℃程度であるので、約35℃程度高いことになる。この温度の上昇は、空気に含まれる温室効果気体(温室効果ガス、グリーンハウス・ガス)による結果である。
温室効果気体としては、二酸化炭素(CO2)だけではなく、水蒸気やメタンも存在する。温室効果としては水蒸気の効果が大きく、二酸化炭素の効果は、先ほどの35度のうちの約10℃程度といわれている。したがって、大気中の二酸化炭素(CO2)が倍増すれば、長い時間の経過によっては、3℃程度の温度上昇が起きるであろうことに間違いない。
今後、地球の温暖化はどこまで進むのか?
しかしながら、今、世界が問題にしていることは、この先、10年から100年程度の時間スケールでの気候の変動である。現在の地球の表面温度が上昇しているということ、特に、1990年代以降の気温の上昇は疑う余地がない事実となっている。したがって論点は、現在の温度の上昇が人間活動の寄与なのか、否かに移っている。気候システムには、エルニーニョや氷期と間氷期とのサイクルなどのさまざまな時間スケールを持つ固有の気候変動があるので、「現在の温暖化は自然変動ではないか?」という疑問が繰り返し出されている。
これらの質問については、2007年のIPCC第4次評価報告書では、20世紀の気候変動の数値シミュレーションから「90%の確率で人間活動は最近の温暖化に寄与している」と、人為的寄与はほぼ確実である、との結論を出している。
人間活動による温室効果気体の増加を考慮しない限り、1980年代以降の気温の上昇が再現できないからである。
温暖化によって、地球はどうなるのか?
それでは、温暖化したら何が問題なのであろうか。地球の温暖化は、今までと異なる気候になることを意味する。だから、我々はそれに適応していけばよい、ということもできる。ただ、現在の我々の社会は、今の気候に対応するように膨大な設備投資が行われてきている。たとえば、東京の水資源は、上越の冬の降雪量を想定して、ダムなどの水利用計画が作られている。もし、温暖化によって、冬に雪が降らなければ、梅雨期の前の渇水が心配になる。また、海面が上昇すれば、海岸の堤防のかさ上げなどの費用が発生することになる。いずれにせよ、新しい気候に対応した資金の投資が必要とされる。
このような事態は、貧困国、あるいは貧困層の生活を直撃する。地球温暖化による影響は、正しい対応策が講じられなければ、結局、企業倒産の増加や物価の上昇という影響となり、貧困層が拡大する結果となろう。これらの結果として、世の中は不安定になってゆくと思われる。
20世紀は、大量生産・大量消費・大量廃棄というパラダイムで、経済成長をひたすら追求してきた。しかしながら、21世紀には、そのような路線は、地球の資源や廃棄物処理能力など、環境が受容できる量には限りがあるため、不可能となっている。最近の、石油高、食料の高騰は、その兆しである。地球の容量に見合った、サステイナブル(持続可能)な発展の道を確立する必要がある。
温室効果気体
(greenhouse gases)
温室効果ガス、グリーン効果ガスともいい、人類の経済活動によってもたらされた二酸化炭素、メタン、フロン12、一酸化二窒素などのガスの総称。これらの温室効果ガスが、ビニールハウスのように地球を覆うことで、地球に熱収支に重要な働きをもたらし、ビニールハウスの中のように地球の温度を上げている。温室効果気体は、二酸化炭素に換算すると年に約1%の割合で増加している。2006年の全球(地球)の年平均濃度は、381.2ppmvであり、産業革命以前の約280ppmvに比べ、約36%強の増加を示している。