多彩なチームが集まったC組
日本の初戦は2014年6月14日(土)午後10時(日本時間15日午前10時)開始のレシフェでのコートジボワール戦、第2戦は19日(木)午後7時(日本時間20日午前7時)ナタルでのギリシャ戦、そして第3戦は、24日(火)午後4時(日本時間25日午前5時)クイアバでのコロンビア戦。「やっかいなグループ」。私はそんな感想をもった。
13年12月6日(日本時間7日)、FIFAワールドカップ2014ブラジル大会出場32チームの1次リーグ(グループリーグ)の試合が決まった。日本はC組。アフリカの雄コートジボワール、ヨーロッパのダークホース・ギリシャ、そして南米予選2位、急激に力をつけたコロンビア。地域の異なる多彩なチームが集まるグループとなった。
私が「やっかい」と思うのは、グループに圧倒的な存在がいないことだ。
大会での派手な実績はないが
この組のシードはコロンビア。10年大会から、八つのグループのシードチームは、開催国以外は抽選会の年の10月現在のFIFAランキングで決められている。南米予選での好成績でポイントを稼いだコロンビアは4位。ちなみに、南米予選がスタートした11年10月時点ではFIFAランキング31位。このとき、日本は17位、ギリシャは8位、コートジボワールは19位だった。ワールドカップ出場は日本と同じ5回目、1998年フランス大会を最後に出場から遠のいており、4大会ぶり。最高の成績が90年イタリア大会の14位(ラウンド16でカメルーンに1-2で敗退)。過去4大会の通算成績は3勝2分け8敗、勝ち点11で、同じ過去4大会出場の日本の4勝3分け7敗、勝ち点15に及ばない。「シード」とはいえ、優勝経験どころか、ベスト8に入ったこともない。
コロンビアだけではない。初戦で当たるコートジボワールは、3大会連続3回目の出場。FW(フォワード)ドログバ(トルコのガラタサライ所属)の得点力に引っ張られて2006年ドイツ大会から連続出場しているが、過去2回はいずれもグループステージで敗退している。通算成績は2勝1分け3敗、勝ち点7。
ギリシャも出場3回目。10年南アフリカ大会では韓国に0-2、ナイジェリアに2-1、アルゼンチンに0-2。1勝2敗、グループステージで敗退している。通算成績は1勝5敗、勝ち点3だ。
すなわち、過去のワールドカップでの成績を見れば、日本がトップ。ワールドカップでのグループリーグ突破の経験は、日本が2回(02年、10年)、コロンビアが1回あるだけで、ベスト8以上の実績を持つチームは一つもないのだ。
「客観的」実力は日本より「格上」
こうしたイメージから、「ラッキーなグループ」という見方も多い。確かに、お隣のD組を見れば、ウルグアイ(ワールドカップ優勝2回)、イタリア(同4回)、イングランド(同1回)と優勝経験国が並び、「死の組」とさえいわれている。そうした「ビッグネーム」と戦わずに済むことだけで、「ラッキー」と見るのは当然だろう。しかし現在のチーム力を見れば、どこも今回のワールドカップで上位に進出してセンセーションを起こす可能性を秘めており、客観的に見れば、全て日本より「格上」といえる。
コロンビアはアルゼンチン人監督のペケルマンに徹底的に鍛えられ、近代的なサッカーを身に付けた。コロンビアといえば南米でもトップクラスの(一時はブラジル以上といわれた)高い個人技を持った選手を並べ、その個人技を前面に押し出したサッカーで知られていた。しかし現在は、全員が激しく動き、守備と攻撃を連動させたサッカーを見せる。その上にFWファルカオ(フランスのASモナコ所属)という超エースを持っている。瞬間的なスピードと技術を生かし、驚異的な決定力を誇るストライカーだ。高い個人技を持った集団がハードワークを叩き込まれたことで、高い戦闘力が生まれたのだ。
初戦で当たるコートジボワールは、アフリカ予選を無敗で乗り切った。フランス人監督のラムシはかつてザッケローニ監督の指揮下でプレーした経験をもつ42歳の若手。超エースのドログバを軸に、右からFWジェルビーニョ(イタリアのASローマ所属)、左からFWカルー(フランスのLOSCリール・メトロポール所属)、そしてトップ下からMF(ミッドフィールダー)Y.トゥーレ(イングランドのマンチェスター・シティ所属)がサポートする攻撃陣は強力そのものだ。アルベルト・ザッケローニ監督は、「アフリカ最強チーム」と評価している。
そしてギリシャは、12年のヨーロッパ選手権でベスト8に進出し、ワールドカップ予選では10戦して8勝1分け1敗。勝ち点25を記録してボスニア・ヘルツェゴビナと並んだが、得失点差で2位。プレーオフではルーマニアを3-1、1-1で下した。世界的なスターはいないが、大柄な選手を並べ、堅固な守備組織から猛烈なスピードを持ったカウンターアタックを繰り出す。このスタイルを作り出したドイツ人監督レーハーゲルのサッカーを継承したのはポルトガル人監督のフェルナンド・サントス。もしかしたら、日本にとって最もやりにくいタイプの相手かもしれない。
「名前や実績はないが高い戦闘力を持っている」。日本のライバル3チームは、その点で共通している。その点が「やっかい」なのだ。
本田、香川の出来次第でベスト8も
ザッケローニ監督率いる日本代表は、3大会連続して世界で最も早く予選突破を決めたものの、順風満帆だった12年までと比較し、13年は苦しんだ。6月から8月にかけては、守備力のなさを指摘され、10月にセルビアとベラルーシを相手にした国際試合では、攻撃面で行き詰まり感が出てしまったのだ。しかし11月にオランダ、ベルギーというFIFAランキング1ケタ台の強豪と連戦したときには、攻守両面ではつらつとしたプレーが出て、オランダとは2-2で引き分け、ベルギーには3-2で勝った。メンバーが固定していたチームに、FW柿谷曜一朗(C大阪)、FW大迫勇也(鹿島)、MF山口螢(C大阪)、DF(ディフェンダー)森重真人(F東京)といったJリーグの若い選手たちがはいって活躍し、この2試合でチームが一挙に活性化した。
しかしワールドカップでのキーマンを考えれば、やはりMF本田圭佑とFW香川真司のコンディションが最も重要なポイントとなる。ACミランに移籍した本田がイタリアのセリエAでコンスタントに活躍できるか、監督交代によるマンチェスター・ユナイテッドのサッカーの変容に戸惑う香川が、冬の期間に移籍し、調子を取り戻すのか……。