そして、戦後も日米政府の暗黙の了解のもとで、この研究に従事した科学者の責任は問われませんでした。
こうした事態がなぜ生じたのかという問題は、核(原子力)をめぐる科学の歴史とも無関係とは言えません。第二次世界大戦後も軍事秘密の名の下に、放射能被害が軽視される事態が続きました。甚だしい健康被害が明らかになっても放置された太平洋のビキニ環礁の住民の例は、アメリカも認めざるを得ませんでした。軍事目的のために行われた研究が人間の尊厳を脅かしたり、否認するような事態が生じたりという事実を私たちは忘れてはなりません。
自律した機関であることの意義
歴代の会長や会員は、日本学術会議という機関の自律を重要視してきました。科学・学術の自由・自律を守るために、日本学術会議の自由・自律を譲ってはならないと考えてきたからです。
それは、政府に都合のよい回答を出すことが、国家のために貢献していることに必ずしもならない。長期的な見通しの中で、学術的な良心に沿って、合意を得ていくことが、市民社会と国家に対する長期的な意味での責任を果たすことになるとの論拠からです。
「安全保障と学術に関する検討委員会」は、月に一度の割合で開催される予定です。審議内容等については、日本学術会議のホームページに随時アップされます。
この委員会の動向は、日本の学術だけではなく、広く日本の社会の未来に大きくかかわる事柄です。委員会でどのようなやり取りがなされているのか、より多くの方々に関心を持っていただき、その内容についてじっくり考えていただきたいと思います。