大会はワールドカップの予行演習
FIFAコンフェデレーションズカップは、国際サッカー連盟(FIFA)が主催する男子の世界大会のなかでは最も新しい大会。1992年にスタートし、今年2013年6月15日から30日(現地時間)までブラジルで行われる大会で第9回になる。1992年10月に第1回が行われたときには、「ファハド国王杯インターコンチネンタル選手権」という名称の招待大会だった。当時アジア・チャンピオンだったサウジアラビアのサッカー協会が主催し、南米チャンピオンのアルゼンチン、アフリカ・チャンピオンのコートジボワール、そして北中米カリブ海チャンピオンのアメリカを招待した。
第1回大会は出場わずか4カ国、しかもヨーロッパ・チャンピオンは不参加という不完全な形だった。しかし95年1月に行われた第2回大会では出場6チームに増え、ヨーロッパ・チャンピオンのデンマークも出場してほぼ完全な形となった。そして97年12月に開催された第3回からは、主催がFIFAの手に移り、名称も「FIFAコンフェデレーションズカップ」と変わった。
「コンフェデレーション」とは、FIFAの下に組織された六つの「地域連盟」のこと。各連盟のチャンピオン計6チームに、世界チャンピオン(ワールドカップ優勝チーム)、そしてホスト国を含めた計8チームで争うという現在の形ができた。
99年7月に開催された第4回メキシコ大会からはサウジアラビアを離れ、各国で開催されることになった。2005年までは2年に1度の大会だったが、以後は4年に1度、ワールドカップの前年にワールドカップ開催国で行うようになっている。「ワールドカップの予行演習(プレ大会)」という形だ。
日本は「準常連」国
1992年以来、6回のアジアカップのうち4回も優勝を飾っている日本は、この大会の「準常連」といっていい存在だ。過去8大会中4回に出場し、日本と韓国を舞台に開催された2001年大会では準優勝を飾っている。今大会で5回目の出場となるが、ブラジル(7回目)、メキシコ(6回目)に次ぐ第3位の出場回数ということになる。来年のワールドカップではブラジル全土の12都市が会場となるが、今回のコンフェデレーションズカップで使用されるのはそのうち6会場。北からフォルタレザ、レシーフェ、サルバドール、ブラジリア、ベロオリゾンテ、そしてリオデジャネイロ。今回の決勝戦会場で、来年のワールドカップでも決勝戦が行われる予定のリオデジャネイロ・マラカナン・スタジアムは、改修工事がほぼ完了し、6月2日にイングランド代表を迎えてブラジル代表との親善試合が行われた。
難敵が揃うA組
出場8チームを4チームずつ2組に分け、両組の1、2位が準決勝に進むという形の大会。日本はA組に入り、ブラジル、イタリア、メキシコと対戦する。開幕戦(6月15日)で対戦するブラジルは、現在FIFAランキング22位という信じがたい地位にいるが、これはワールドカップ・ホスト国として予選がないため、ポイントを稼げない結果だ。けっして弱くなっているわけではない。サントスFCからスペインのバルセロナに5700万ユーロ(約74億円)で移籍したエースのFW(フォワード)ネイマール、そして超人的なスピードとパワーを誇るFWフッキのコンビは破壊力抜群。チアゴ・シウバとダビド・ルイスをセンターバックに並べた守備も強力だ。この大会で4回目の優勝を目指し、来年(14年)のワールドカップでは6回目の優勝を目指す。
第2戦(6月19日)の相手は昨12年のEURO(ヨーロッパ選手権)準優勝のイタリア(優勝したスペインが「世界チャンピオン」としてこの大会に出場するため繰り上げ出場)。FIFAランキングは8位。世界最高クラスの名MF(ミッドフィールダー)ピルロが攻撃を操り、「モンスター」クラスのFWバロテッリが相手ゴールを襲う。伝統の守備の強さも健在だ。ワールドカップのヨーロッパ予選でも無敗で首位を走っている。日本代表としては非常に難しい相手だ。
そして第3戦(6月22日)で当たるメキシコは、北中米カリブ海チャンピオン。FIFAランキング17位。12年のロンドン・オリンピックでは決勝戦で代表選手を並べたブラジルを下して優勝を飾るなど、強豪と互角に戦う力をつけている。ただワールドカップの北中米カリブ海の最終予選では初戦から3連続引き分けと苦しみ、6月4日(ジャマイカ、アウェー)、7日(パナマ、アウェー)、そして11日(コスタリカ、ホーム)と予選の3連戦をこなしてのコンフェデレーションズカップ参加となり、コンディションの面では不安がある。
本番前の絶好のシミュレーションに
日本は6月4日に世界で最も早くワールドカップ出場を決め、予選の最終戦(11日、対イラク、カタール・ドーハ)は調整ゲームにできるという利点がある。カタール経由でブラジル入りは初戦の3日前と楽ではないが、12時間の時差があるブラジルに直行するのではなく、時差調整は6時間ずつになるので、負担は軽減され、6月4日のオーストラリア戦よりずっと良いコンディションで大会に臨むことができるかもしれない。FIFAコンフェデレーションズカップ出場の最大の意義は、ワールドカップ開催国で、ワールドカップ用のスタジアムを使い、ワールドカップ・クラスのチームを相手に試合ができることだ。ブラジル、イタリア、メキシコはいずれもワールドカップで優勝、あるいはそれに準じる成績が期待できるチーム。だがそれでも恐れず、こうしたチームに日本の力を思い切りぶつけることが、何より大事だ。
自陣に引いて守るのでは日本の良さは出ない。果敢に前線から守備をし、ボールを奪ったらMF本田圭佑とFW香川真司を中心にパスを回してコンビネーションで攻め崩す。
「決定力不足」が課題の日本だが、コンフェデレーションズカップではそう多くのシュートチャンスはないだろう。数少ないチャンスをものにし、勝機をつかみたいところだ。
私は、結果(勝敗)は二の次で、この大会は「ブラジルを経験すること」が最も重要なポイントと考えている。しかしワールドカップ予選突破を決めた6月4日のオーストラリア戦後、本田はテレビカメラに向かってこう宣言した。
「みなさんあまり期待していないかもしれないけれど、僕は優勝しに行く」
グループリーグを突破し、決勝まで5試合戦って、来年に向けての大きなステップになることを期待しよう。