元祖ヒーロー・ヒロインたちの第二弾。歌舞伎ならではのドロドロの人間関係、因果応報の倫理観、浮き世のしがらみが面白い! 歌舞伎のキャラクターには、人間の持つあらゆる性格や感情、行動が凝縮されているのだ。(2009年 編集協力/伊佐めぐみ)
お半・長右衛門(おはん・ちょうえもん)
まだあどけなさの残る少女と、妻帯者で分別もある壮年の男。年の差二十余歳の心中。もとは二人とも隣同士のなじみで、お半が「おじさん」と敬慕する無邪気さ、長右衛門が妹のように可愛がる様子も不自然ではなかったが、同宿することになった夜、他の男から執拗に言い寄られたお半が、長右衛門の布団へ逃げ込んで男女の関係に。健気なお半の遺書が男の分別を失わせ、二人はともに死の旅へ。『桂川連理柵(かつらがわれんりのしがらみ)』(1784年初演)。
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斎藤別当実盛(さいとうのべっとうさねもり)
白髪を黒く染め、戦場に赴いた武将として史実でも有名。今は平家に仕える身だが、源氏への思い厚く、源氏の白旗が平家に渡るのを阻止するためには溺れている女でも斬る。それが眼前にいる幼子の母であったとは。母の仇と血気にはやる幼子の姿に感銘し、成人したあかつきには立ち合うことを約束する。年老いても今と同じ黒髪で再会しようと誓う。『源平布引滝(げんぺいぬのびきのたき)』(1756年頃初演)。
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おわさ
かつて闇夜に見知らぬ男と契って一人の娘を生み、女手一つで育て上げた肝っ玉おっ母。その娘は御家のため身代わりに首を打たれる覚悟だが、まだ見ぬ父との再会まで思いとどまらせようと説得中。夫の証拠は赤い片袖。首を受け取る役目の弁慶はそれを知り、娘を斬って号泣する。実は弁慶こそわが夫であったと喜ぶ気持ちと、親に斬られる娘への憐憫の情を裏表で見せる役。『御所桜堀川夜討(ごしょざくらほりかわようち)』(1755年初演)。
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平作(へいさく)
旅荷を運ぶ日雇い労働者といってもヨボヨボ。途中でけがをして客に荷を持たせる始末。親切な客、十兵衛が薬を塗って家まで送ってくれたので、詫びとして泊まってもらうことに。その夜、娘の起こした薬の窃盗未遂(せっとうみすい)が発端となり、十兵衛が実は養子に出した息子と判明。十兵衛は娘夫婦が仇と狙う男の行方も知ってた。平作は自らの命を投げ打って、十兵衛の固い口から仇の居所を聞き出す。『伊賀越道中双六(いがごえどうちゅうすごろく)』(1783年初演)。
◆その他のミニ知識はこちら!【歌舞伎のヒーロー・ヒロイン列伝 Part 2】