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京都市上京区の寺之内通堀川に、「人形寺(にんぎょうでら)」と通称される尼寺がある。臨済宗単立の門跡尼寺(もんせきにじ)「宝鏡寺(ほうきょうじ)」である。
この寺には、幕末動乱時の天皇、孝明天皇遺愛の人形をはじめ、皇室関連の人形が多く残されている。普段は非公開ながら、そうした皇室ゆかりの人形を中心として春と秋の2回「人形展」を催して公開、とりわけ春のそれは雛(ひな)人形を主体としたものとなって、女性を中心に全国から多くの参拝者を集めている。そして、この「人形展」が始まった昭和30年代前半のころから一般に「人形寺」と呼ばれるようにもなった。
この宝鏡寺に、なぜ多くの皇室ゆかりの人形が所蔵されているのか。それは、ここが「門跡尼寺」だからである。「門跡」とは、天皇の子や貴族などが住する特定の寺で、平安前期の宇多天皇が出家して仁和寺に入ったのを始まりとする。そして、室町時代にはその寺の格式を示す語となった。寺に入るのが天皇の女子、つまり皇女ならば、門跡尼寺となる。
宝鏡寺の場合は、室町初期に光厳天皇の皇女が開山した門跡尼寺で、所在の町名から百々御所(どどのごしょ)という御所号も持つ。そして、江戸時代初期に後水尾天皇の皇女が入寺してから後は、代々の住持を皇女が務めてきた。また、幕末のころ、徳川14代将軍家茂(いえもち)に降嫁し、公武合体のシンボルとなった孝明天皇の妹皇女和宮(かずのみや)も、この寺ゆかりの女性である。
秋には人形供養祭があり、雛人形や西洋人形なども全国から納められて、後日、お火上げされる。
境内には、武者小路実篤の歌「人形よ 誰がつくりしか 誰に愛されしか 知らねども 愛された事実こそ 汝が成仏の誠なれ」が刻まれた「人形塚」がある。
(2009/07/31)
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