祖母の家は敵であるM-18の縄張りにあったからだ。そこで、マラスの活動が活発になる夕方5時以降を避け、真昼間にコソコソと敵地に忍び込んだ。
そうして続いた街でのギャング生活は、ある日突然、終わりを告げることになる。警察に捕まったのだ。
「仲間数人とファストフード店でバーガーを買って、支払いをせずに店を出たんです。石を拾ってガラス戸に投げつけ、割れる音を背に走り去ろうとしました。そこへDGICが現れたんです」
DGIC(現・DNIC=国家犯罪捜査部)とは、当時殺人と麻薬犯罪を専門に調査していた警察組織だ。彼らは「MS-13の『コネーハ』」をマークして、密かに後をつけていた。
「DGICの連中は車ですうっと寄ってくると、窓越しに『コネーハ!』と叫びました。私服だったので最初は警察だとは思わず、『違うわ』と言い返すと、男が降りてきて私の腕を掴み、『お前はコネーハだ!』とブラウスの袖を引きちぎりました。それでMSというタトゥーが見えてしまったんです。もう言い逃れはできませんでした」
現行犯逮捕された少女は、刑務所へ送られる。ニセの身分証では18歳ということになっていたため、成人扱いされたのだ。行く先は、ホーミーたちがいる、街で最大の刑務所。そこでは、途方もない運命が待ち受けていた。(つづく)