某月某日。北海道の門別競馬場にいた。
札幌のライブの主催者から、日程候補がいくつか送られてきて、ここなら門別競馬場の年内最終開催日とつなげられます、と丁寧な文言が添えてあった、その日に、ライブを組むことにした。
門別競馬場は行ったことがなかった。北海道で唯一の地方競馬場。帯広のばんえい競馬、札幌、函館の中央競馬はあるが、地方競馬はここ門別だけだ。ライブの前々日に北海道入りし、競馬場へと向かった。
新千歳空港からまずは札幌へ。ちょうどいい時間帯の飛行機がなかったので、だいぶ早くに札幌駅に着いた。ギターとスーツケースがあるので、あまりウロウロはできない、したくないと思い、今回は事前に、喫茶店を探しておいた。ネットの情報では、駅からすぐ出たところに、古い喫茶店があるという。果たして、実際に来てみると、たしかにそこにあった。駅と向かい合ったところにある、古いビルの1階。これはいい。これから使えるぞ、と思いながら、近づき、店に入った。店内はこぢんまりとしていて、のんびりした空気が流れていた。かなり好みの喫茶店だ。入り口のところに荷物置いていいですよ、と言われたのは、やはり同じようにお店を使う人が多いからだろう。
モーニングを頼み、地元の北海道新聞を読む。知床の船の事故の下に、バスが10路線廃止、という記事があった。鉄道が廃線になったり、バスがなくなったり、これは車がない人には死活問題だと思った。関東にいても、バス少なくなったなと思うのに、北海道の公共交通機関の減少率は、その比ではないだろう。旅の最初に、この記事を読めてよかった。
朝も早よから営業中。サンキュー
店を出て、ロータリーに向かった。このロータリーから門別行きのバスが出る。競馬場が出している無料シャトルバスで、すでに10人以上が並んでいた。いや、もっとか、30人くらいは並んでいたか。だいぶ前に予約は済ませていたので、安心してその列に並んだが、一応、これは門別競馬場行きの列ですか、と前の人に確認した。そうですよ、と教えてくれた。
後ろに並んだおじさんと、競馬の話をした。歯が欠けたおじさんは、ニコニコと楽しそうだった。おれはこういう人好きなんだよな、と思いながら話をさせてもらった。
バスが来て、3台並んだ。気づけば人がかなり並んでいた。年内最後のホッカイドウ競馬を楽しみに色々なところからファンが駆けつけたのだろう。長い冬、北海道ではばんえい以外競馬開催がなくなるだろうから。
バスは高速を走り、途中1回休憩を挟み、1時間ほどで、門別競馬場に着いた。初めて来た。車窓から、厩舎の建物がいくつか見える。競馬場と一体になっているのがよくわかる。バスから降りると、冷たい風が、頬にあたった。午後の光が広いコースに降り注いでいた。日は少し傾き始めていて、冬が近いことを思わせた。
さっそくパドックの方へ行き、馬を眺めた。まず最初に驚いたのは、馬を引いてる厩務員に、インド系の外国人が多いこと。最近関東の地方競馬も行けていないので、これは全国的なことなのだろうか。それとも北海道だけなのだろうか。半分以上、いや、7割くらいの割合で、インド系の人が馬を引いていた。食堂には本格的なカレーの店もあり、ここでもインド人らしき人が働いていた。さらには、スタンドにいる客にも、インド系のグループの若者たちがいた。額に赤い点をつけていたので、インド人だろうと思う。昔どこかで、インドでは競馬が盛んだ、という記事を見かけたことがあったので、それでパイプができたのだろうか。ナマステ、と心の中で挨拶をした。
パドック。インド系の方が多かった。ナマステ!
広いダートコースはおそらく日本最大級だろう。馬もどこかのびのびと走っているように見えて、それは気のせいだろうと思うが、北海道の大地に、馬は似合っていた。何レースかやると、もう日が暮れかけてきて、夕日の中を、馬たちが走っていた。何枚も写真を撮った。馬は走った。おれは写真を撮った。馬はゴール板を過ぎると、減速して、ジョッキーも手綱をゆるめた。少し桃色がかった丸い太陽は、いよいよ向こうのほうへ、すべり落ちていった。