このあたりが“意識高い系”
日本人を妻に持つ夫は、それなりに日本の情報にアンテナを張っていて、たまに夫婦の会話で日本ネタを話題にすることがあります。夫「ドコモの孫正義はすごいビジネスマンだね。僕は彼を尊敬してるんだ」
私「孫正義はドコモじゃなくてソフトバンクだよ」
「ソフトバンクとドコモは同じ会社でしょ?」
「違う」
かなり強固にインプットされていたらしく、その後、もう一度訂正してあげた次第。
そして、炊飯器を買ったときの会話。
夫「ご飯は毎日食べるから、マイコン付きのいいのを買おう」
私「タウンジーの店で買えるのは、シャープか日立かパナソニックだよ」
「当然、パナソニックだね」
「シャープと日立はダメなの?」
「経営がやばいでしょう」
「いやいや、経営じゃなくて炊飯器の性能は?」
「う~ん、家電は今、コリアの時代だからなぁ」
会話がかみ合わなくなったのですが、結局、パナソニックの炊飯器を購入。
そして、念願の電子レンジ付きオーブンを買うことになったとき。私は「安物買いの銭失い」的なところがあるのですが、夫は高くても良いものを買いたい派です。
私「予算は2万円くらい?」
夫「もっと高くて、いいやつはないの?」
「あるある! ヘルシオ! 健康にいいんだよ~」
「じゃあそれにしよう」
「ひゃ~っ! セレブ~! シャープだけど、いいの?」
「シャープも経営が大変なんだから、助けてあげなきゃ」
ところがミャンマーではヘルシオの取り扱いがなく、結局、パナソニック製を購入。
お陰様で、わが家にはパナソニック製品がたくさんあるのですが、洗濯機は韓国製。というのも、タウンジーで売っているドラム式は、サムスンとLGしかなかったから。夫は高いほうのサムスンを選ぶと思いきや……。
「どっちもコリアで一緒だから、安いほうにしよう」
家電はコリアと言いながら、大したこだわりはなかったようで、LGを40万チャット(約4万円)で購入。10万円くらいすると思っていた夫は、びっくりしながら大喜び。
「こんなに小さなiPadは7万円もしたのに、こんなに大きな洗濯機が4万円だなんて!」
「夫、ワンピースを否定する」の巻
先日、夫と話していてショックを受けました。私は本が大好きで、暇さえあれば読みまくっています。先日も、タウンジーに来た人からいただいた東野圭吾の『秘密』を読んだところ大感動。そして「この感動を誰かとわかち合いたい!」と、テンション上げ上げになった私。しかし、ここはタウンジー。語り合える相手がいません。だったら、この感動を共有すべき相手は夫だと考え、夫相手にあらすじを話し始めたのでした。
「妻と娘が事故に遭って、娘の体の中に妻が入って……」
「頭がおかしくなったのか? 妻が娘の中に入るとか、ありえないだろう」
いや、ありえないことも想像力を広げて描かれているのが小説のだいご味じゃないの!?
「だいたい小説なんて時間の無駄、もっと知識になることが書いてある本を読むべきだよ」
そしてなぜか、小説だけではなく、日本のアニメまで攻撃対象に。
「ほら、アニメのあれ……、海に行って帽子かぶってるやつ」
「ワンピース?」
「そう。あれは腕が伸びたり死ななかったりして、子どもに悪影響を与えているよね。あれを見た子が、死なないと思って刀で切りかかったとネットで見た。子どもに勘違いをさせるから、ああいうのは良くない!」
え~っ、まさかのワンピース否定!? 表面的なことだけでワンピースを語るなっ! 友情とか夢とか、素晴らしいものがたくさん描かれてるじゃんっ! と、反発したかったのですが、こういう抽象的な話をミャンマー語で議論するのはなかなか難しく(涙)。
だいたい「海に行って帽子かぶってるやつ」って適当すぎやろっ!
ミャンマーではお金持ちがインスタントラーメンを食べる
ワンピース否定の夫ですが、日本の食品メーカー「エースコック」は大好き。健康オタクの夫は、化学調味料や脂は体によくないからと外食嫌い。このため、せっせと夕飯を作る健気な嫁……なのですが、たまにおかずがお気に召さないことも。すると夫は「こっしー」を作り始めます。
「こっしー」はエースコックがミャンマーで販売しているインスタントラーメン。その名の通りめんにコシがあり、「このラーメン、アヨー(骨、芯という意味)があるね」と、夫のお気に入りです。「こっしー」を食べながら「エース、いい仕事してるね~」と満足げな夫は、「エース」を誰かの名前だと勘違いしているようす。私が「エースコック」と呼んでいるのを聞いて、「エース」がcook(調理)している、と思い込んでいるのです。
かわいい勘違いなので、突っ込んでませんけどね。
夫はインスタントラーメンの作り方にもこだわっていて、めんをゆでたお湯は捨て、新しいお湯でスープを作ります。その理由は「体に悪い薬がめんからお湯に溶け出すから」
これは、義母の受け売りみたいです。
さて、ラーメンに関する夫の持論がもうひとつ。
「日本ではお金がない人がインスタントラーメンを食べるが、ミャンマーではお金持ちがインスタントラーメンを食べる」
おっしゃるとおり! 中国製や韓国製のインスタントラーメン(800~1000チャット=約80~100円)よりも、屋台で食べるシャンカウスエ(500チャット=約50円)のほうが確かに安い!
日本のトイレは遅れてる?
最後の“意識高い系”ネタは、トイレについて。私の実家のトイレは、ウォシュレットを付けていません。夫はそれが気になるようで、たまに「付けた?」と聞いてきます。
というのも、ミャンマーの水洗トイレには、引き金を引いてお尻を洗う水鉄砲みたいなものが付いているから。その名も「ハンドスプレー」。そのまんま(笑)。
そんなトイレ文化で育った夫に言わせれば、「トイレットペーパーを使う日本のトイレは遅れている」のだそうです。
食道や市場では、まだ水洗化されていないトイレも多いのですが、その場合もトイレットペーパーは使いません。個室には水を入れた洗面器が置いてあり、便器は金隠しがなく平ら。用を足したら洗面器の水でお尻を洗った後、床から全部流します。
座る向きは、ドアのほうを向いて座るのがミャンマー流。日本と逆ですね。ミャンマーに来たばかりのころ、「そうすればダイレクトに流れるから」と教えられました。しかし、実際にそうしたら、ものすごくハネる! これは絶対に、日本式に後ろ向きのほうがいいっ!
というわけで、個室の中では私流に使うようにしているのですが、以前、市場でトイレに行ったときのこと。用を足していたら、いきなりドアを開けられたのですが、開けられた私よりも、開けた相手の動揺が激しくて。よく考えたら、顔と顔が合うはずなのに、そこにお尻があったからかもしれません。
さて、ミャンマー人は大らかというか、パーキングなど混んでいるトイレでは、女性が二人一緒に個室に入るのはよくあるパターン。それどころか、ドアなしで足置き場と溝だけの女性トイレまで! ロンジーで隠れるからでしょうが、いや~、ムリ~!
以上、ミャンマートイレ事情でした。
ちなみに、夫が来日したとき、デパートのトイレから出てきて、こんな驚き方をしていました。
「あんなにトイレットペーパーが置いてあるのに、取る人はいないのか?」
日本のトイレが遅れているのではなく、ミャンマーではトイレットペーパーを持ち帰る人が多いから、ハンドスプレーなんじゃないの~?