旅行代理店のオーナーが旅行嫌いって……
「あなたの夫は、ケチと呼ばれてました」夫の同級生の激白です。
結婚前、私と友人が旅行することになり、旅行代理店を経営している夫に飛行機のチケットを依頼しました。
ところが「旅行なんて行く意味あるのか?」と売り渋る夫。なんと、旅行代理店のオーナーがまさかの旅行嫌い! その理由は「お金がもったいないから」
その時は「私のお金で行くんだから!」と粘って、ようやく売ってくれたのですが、独身時代に夢見ていたバリ島への新婚旅行は夢のまま。結婚後、夫の出身地であるチャイントンに旅行したいとおねだりしても、「タウンジーと一緒だよ」と、スルーされっぱなし(涙)。
自分たちのことならまだしも、「お金がもったいない」がお客さんに向けられることも。たまに日本の方からチケットの依頼をいただくのですが、「1日しか滞在しないなんてもったいない。本当にいいのか確認して」と心配し、「もったいないから、次の便にするように伝えてよ」と、本気で言い出す始末。
さすがにお客さんには言いませんが、親戚が高級ホテルを予約すると、「もったいないからやめとけ」とストップをかけるし、そんなことでやっていけるのか?
ただ、旅行代理店は義母が始めたビジネスであり、タウンジーの老舗であることは確か。私が仕事で海外に行く時、3社の見積もりを取る必要があり、夫の店とよその代理店に依頼したところ、
「ご主人に聞けばいいでしょ?」
「いや、見積もりが必要なんですよ」
「じゃあうちは、ご主人が言った値段の10ドル乗せ」
ということは、タウンジーではどの代理店に申し込んでも、海外旅行は夫の会社に集約されるってこと?
「そういうことだよね?」と確認したら、「そんなんじゃないよ~」とドヤ顔でした。

“時計が大きい”国には、時間がいっぱい?
ミャンマーは“時計が大きい”国です。そのココロは、待ち合わせに1~2時間遅れるのは普通だし、相手が遅れても怒らないから。この感覚について、友人と車中で「時間がもったいないよね」と話していたら、運転手さんが不思議そうな顔で振り返りました。
「なんでもったいないの? 時間なんていっぱいあるじゃん」
こんなふうに時計が大きい国では、夫の仕事も大変です。
「閉店までにチケットを取りに行きます」と電話してきたのに、閉店後1時間経っても取りに来ないなんてザラ。夫はお客さんを待たずに店を閉めて帰って来ることもあるのですが、それでも旅行代理店が成り立つ不思議の国。
帰宅後もしょっちゅうスマホが鳴り、「明日の飛行機、お願いします」って、前日の夜ですよ! 仕方がないので、夫は店に戻ってパソコンを立ち上げ、チケットをお客さんの家まで配達に。
いや、前日ならまだマシで、朝6時に「今日、行きたいんだけど」とか、「今日は間に合わなかったから明日にする」とか、そんな人ばっかり!
夫の入浴中にスマホが鳴ると、私が出て「あとでかけなおします」と伝えるのですが、風呂上がりの夫は「もういいよ」。ですよね。気持ちはわかる。わかるんだけど、「かけなおすと伝えたんだから、かけなおして!」と、スマホを押し付ける私。
こんなふうにいつもお客さんに振り回されるのですが、そのたびに夫は不機嫌になるかというと、たまに機嫌のいい時も。チケットを配達して帰宅後、ニコニコしながら、
「今日は閉店後にもお金が入ってきて、うれしいな」
ちなみに、時計が大きい国では、ほとんどの人は飛行機のチケットを往復では買いません。そのココロは、いつ帰ってくるか決めてないから(笑)。
結婚式でお金がなくなる?
夫は、先物取引や株式に興味があるようですが、手は出しません。ケチで旅行嫌いで働き者の夫は、慎重な人でもあるのです。だから、サイドビジネスは貸金業。先物取引や株式は失敗する可能性がありますが、お金を貸せば、必ず利子が入ってくるからOKなのだとか。ただし、お金を貸したら、踏み倒されることも考えられますよね。夫は、そんな危険な橋を渡るような人ではありません。お金を貸す際には担保として貴金属などを預かるので、貸金業というよりも、店舗なしの質屋といったイメージです。
ビジネスだけではなく、思い返せば結婚にも慎重な人でした。交際期間が長引いたのは、この慎重さゆえ。結婚を意識し始めた頃から、こんな会話がしょっちゅうでした。
私「いつ結婚するの?」
夫「結婚式を挙げると、家のお金がなくなるからなぁ」
私「だったらジミ婚でいいから!」
夫「いや、派手になるに決まってるから」
あのお義母さんじゃジミ婚は無理だったと、今ならわかる(笑)。でも、交際中の私は「本当に結婚する気があるの?」と怒り、そのたびに「あ~今日は生理なのか」と、その怒りをスルーしていた夫なのでした。
さて、慎重派の夫は絶対に買いませんが、ミャンマーでは宝くじが人気。今回はお金の話なので、ちょっと紹介しておきましょう。
ミャンマーの宝くじは政府発売のものと、「タイくじ」の2種類。どちらも数字を当てるのですが、政府のものは1カ月に1回で桁数が多く、タイくじは1カ月に2回で3桁。シンプルな後者のほうが人気です。
ただ、タイくじは闇で売られているので、見つかったら捕まるとか。と言っても、警察に少し賄賂を渡せば見逃してもらえるので、誰も気にしてないのがこの国の大らかなところ。
私の職場にもタイくじ好きがいて、たまに「当たった!」と、飛び跳ねています。うわさを聞きつけた借金取りが、すぐに来るんですけどね。

タウンジーセレブは妄想なのか?
では、いよいよ夫の経済状態に切り込んでみましょう。わが家の生活費は、なくなると私が催促して夫からもらうパターンです。金額は、その時に夫のポケットに入っている額に応じて、2万円の時もあれば、5000円しかもらえないことも。長い間私が催促しないと「足りてる?」と心配してくれることもあれば、手持ちがない時には生活費から持ち出し、少し多めに返してくれたりすることも。
だから私は、ビジネスがうまくいっているのか、いないのか、ま~ったくわかりません。
では、実家の経済状態は? 義弟夫婦が、今年の義母の誕生日に贈ったプレゼントがすごかった! なんと2カラットくらいのダイヤ! お値段150万円!
ひえ~っ!と、引いてしまったのですが、義弟夫婦が張り切ったんだから、兄夫妻も頑張ったほうがいいのか? 中国系の家族は親兄弟みんな家計が一緒なので、みんなからのプレゼントということでいいのか? そのへんも、ま~ったくわかりません。
とりあえず夫に「すごいね~」と言ったら、「ニーラーウー(私のこと)のお母さんにも買う?」と聞かれ、「いや、いいです……」
これだけの話だと、実家はお金持ちみたいですよね? ところが、義弟の結婚式のために借金をしたとか。また、本業の旅行業では「キャッシュフローが厳しい。ドルが足りない!」と、いつも言っています。だったら、ダイヤ買ってる場合じゃないでしょ!
とにかく夫の経済は謎が多すぎ! しかし、謎だらけということは、妻にお金の心配をさせていないということ。私の大いなる妄想であっても、わが家はタウンジーセレブということにしておきましょう!

(イラスト/木元ひわこ)