将来に悩んで占いコーナーへ駆け込む
じゃあ一体、私は将来何になりたいんだろう? 何がしたいんだろう? と、この頃はずっと悩んでいました。目立つことが好きだったので、学級委員長や生徒会長を務めていましたが、「目立つ職業」なんてものは自分にはとても就けないと思ってただひたすら悩みました。結局、大学生くらいになれば、何か見つかっているだろう――そう思うことにしていました。
でも実際に大学生になって、目指す職業が見つかったかというと……そんなことはありませんでした。結局やりたいこと、なりたいものが見つからないまま時間だけが過ぎ、そして焦る。そんな時、私は占いを試してみました。
JR姫路駅から近いおみぞ筋商店街の中に姫路フォーラス(2016年閉店)というファッションビルがあり、大学生の頃にそこの占いコーナーへ行ったのです。占いを信じているわけじゃなかったのですが、ものは試しだと思い、70歳くらいのおばあちゃん占い師に占ってもらいました。
名前や生年月日を伝えると、おばあちゃん占い師は「ふむふむ、あなたはパワーがあふれる人だねぇ」と言ってきました。「はぁ」と半信半疑で話を聞いていると、「あなた今年の夏に交通事故に遭うよ。注意しても車が寄ってくるから避けられない、気を付けるんだよ」と言われ、「ええー!?」とびっくり。将来についてちょっと聞いてみようと思っただけなのに、いきなり差し迫った身の危険を予言されるとは……。
私は「占いだし、まさかそんな。避けられないのにどう気を付けるのさ?」と心の中で思いつつ、一番聞きたかった質問をしてみました。
「ねぇおばあちゃん、私にはどんな仕事が向いていますか?」
するとおばあちゃん占い師はこう言いました。
「あなたは人前に出る仕事に就くよ。芸能活動なのか、タレント活動っていうのか、とにかくそういう仕事が向いているよ。あとは起業するのも向いているよ。あなたをいろんな人が助けてくれると思うよ。だから人を大切にするんだよ」
これまた私は「まさかそんなことあるわけないわ。おばあちゃん適当やなぁ。あり得ない。だって私は東京とか大阪とかに住んでいないから、そんなチャンスないわ!」と一笑に付しました。
30分ほどの占いが終わり、料金2000円を支払っておばあちゃん占い師にお礼を伝えました。後から聞いたら他の占いの相場よりも時間が長くて安い、かなり良心的な占い師だったそうです。でも、その時の私の感想は、「占いってこんなものなのかー。まーさすがに当たらないでしょう」でした。そう思ってすぐに占いのことは忘れてしまいました。
素直に目指したら良かったじゃん
ところが数カ月後、このおばあちゃん占い師の予言を思い返すことになります。
その年の夏、私は大学近くの道で原付バイクに乗っていたところ、横から突っ込んできた車にはねられました。幸いスピードは出ていなかったので1週間入院しただけで退院できましたが、入院中のベッドの上で「あーそういえばおばあちゃんの占い、当たったやん」と、ふと思い出したのです。
「占いって、当たることもあるのかー」なんて考えながらも、でもやっぱり向いている職業に関する予言は信じられなかったので、「これは、たまたまだね」と自分に言い聞かせることにしました。ただ、おばあちゃん占い師が言っていた「人を大切にするんだよ」については心掛けてみることにしました。
そして今、私は人を大切にできているのでしょうか――?
自分では分かりませんけれど、結局、私はあの時おばあちゃん占い師が言ったような仕事をさせてもらっています。「できるわけない」と思っていた起業もしました。あのおばあちゃん……凄かったんだ! なんだか信じがたい話ですけど、あのおばあちゃん占い師の言葉は本当になりました。他の占い師のところにも行ったことはありますが、全然見当違いなことを言われたりもしたので、あのおばあちゃんがたまたま凄い占い師だったんだな、と思います。
ここまで長々と昔話をしましたが、今回のエッセーで私が何を言いたいのかというと「やりたいことがあったなら素直に目指したら良かったのに」と昔の自分に言ってやりたい! ということなんです。
「やりたいことがなかったんじゃなくて、やりたいことはあったけど自分で無理と決め付けたり、やりたいということが恥ずかしかったりしただけじゃん」「あんなに『自分には絶対無理だ』と思っていたようなことを、今やれているじゃん」「だったら無理じゃなかったんじゃん、方法あったんじゃん」って。
私は大学卒業後、新卒で就職した自動車ディーラーを辞めてから、やりたいことにとことん打ち込むようになりました。「ゲームがしたいから仕事を辞める」というのは普通は理解しがたいでしょうし、母には大反対されたし、「単に働きたくなかったんでしょ?」なんて言われますが、私の出発点は最初の会社を辞めた時だと思います。私はそれまで「○○がしたいからこうする」と判断して行動したことがありませんでした。なぜならしたいことが分からなかったから。
「土日に開催されるゲームの大会に出たいので、土日が休みではない会社を辞める」なんてあり得ないし、無謀でしたけど、「自分には無理だ」と決め付けて無難に生きていた頃に比べれば良い選択をしたのだと思います。
おばあちゃん占い師にもう一度会いたい
今でもやっぱり「自分にはこれはできない」と決め付けてしまう時がありますが、なるべく「そうは思うけど、とりあえずやってみるか」と切り替えるようにしています。結果的に失敗することもありますが、いろんな人が助けてくれてうまくいくこともあります。やってみたら意外とできた、なんて時もありますし、やっぱり「決め付けは良くないんだなぁ」と思います。
あのおばあちゃん占い師にもう一度会いたくて、姫路フォーラスの占いコーナーには帰省の度に立ち寄ってみたりしていたのですが、ついには一度も会えないままビルごとなくなってしまいました。「おばあちゃんの占い当たったわ! あんまり信じてなかったけど、おばあちゃんの占いは当たった!」って伝えたい。
あのおばあちゃん占い師の言葉があったから、無理だと思っていたことをずーっと意識することができました。だからこそ今があるのかなぁと思うので、お礼が言いたいです。テレビ番組の『探偵!ナイトスクープ』(朝日放送テレビ)に依頼投稿してみようかと思ったこともありましたが、自分本位なネタ過ぎるのでやめておきました。
昨今は「声優になりたいなぁ」と思ったら、VTuber(バーチャルユーチューバー ; アバターを使い、声優のように声をあてて自作動画を配信する人)でもなんでも手軽に自分でできる時代です。何かしたいと思った時に、身近なところで結構手軽にできちゃったりする時代です。
例えば私が昔やっていたアテレコごっこだって、今なら簡単に動画サイトにアップロードできて、いろんな人に聞いてもらえるのです(私のドラマカセットは恥ずかしいから永久お蔵入りさせますけど!)。とにかく今なら田舎に住んでいたって、都会に住む人と同じように自ら何かを発信することができます。だから、もしあなたに何かやりたいことがあれば「失敗してもいいや!」くらいの気持ちでやってみたらどうでしょうか。
ちなみに私は占いは“カウンセリング”だと思っています。