自分勝手に生きて、そして後先考えずとにかく突き進むように過ごしてきた私でも、変わることができるんだなぁ……。今回は〈チョコブランカ〉ことプロゲーマー百地裕子が、自らの価値観の変化に気付くきっかけにもなったという、最近になって彼女の周囲で起きたうれしい出来事をまとめて紹介します。
EVO Japan 2019で〈ももち〉が久々の優勝!
最近、私の周りではうれしい出来事がたくさんありました。
まずは今年の初戦となる格闘ゲーム大会「EVO Japan 2019」(主催 : EVO Japan 2019実行委員会)で、夫の〈ももち〉が優勝したこと。
以前、本連載でも紹介しましたが「Evolution Championship Series(EVO)」は長い歴史を持つ世界最大規模の対戦格闘ゲームトーナメントで、毎年夏にアメリカのラスベガスで決勝大会が行われています。「EVO Japan」はその理念を受け継ぎ、日本で派生した新たな世界的イベントです。今年は2月15~17日、福岡市の福岡国際センターで開催されました。メイン6種目の延べ参加人数は約2500人。海外――特にアジア圏から遠征してきた選手も多数いました。私もエントリーしており、〈ももち〉や忍ismが運営するプロゲーミングチーム所属の〈ジョニィ〉〈大谷〉両選手と共に福岡へ行きました。
これまで大規模なゲームの大会といえば、東京で開催されることがほとんどでしたが、今回は珍しく九州での開催。なので往復には飛行機を利用し、ちょっとした海外大会に行くような感覚でした。福岡はもつ鍋や明太子、ラーメン、魚などがおいしいのでとても好きな地域の一つです。おいしいごはんを期待しつつ福岡入りして、早速その夜にはもつ鍋を味わい元気いっぱいになりました。
そしていよいよ翌日は大会初日です。会場では各スポンサー企業がブースを出展していて、日産自動車のブースには「GT-R」の実車が展示されていました。今まで格闘ゲームの国内大会で実車にお目にかかることはなかったので、車好きの私としては一番びっくりしたし、とてもうれしい気持ちで眺めていました。その他、日清食品ブースではカップヌードルを無料提供してサンプリングしていたり、久光製薬ブースではサロンパスの試供品が配布されたり、ゲーム関連以外の企業ブースもいろいろとありました。一方、ゲームメーカーのブースには発売前の新作ゲームの試遊台があったり、グッズ販売が行われていたりと、これまた楽しい空間となっていました。
そんな会場で、3日間にわたって競われた「ストリートファイターV」部門において〈ももち〉が優勝しました。大きな大会での優勝は1年半ぶり。何より私もエントリーする大きな大会で〈ももち〉が勝ったのは、恐らく「EVO 2015」以来だったので、実際に会場で応援しながら優勝に立ち会えたことが何よりうれしかったです。
夫の試合を観戦する時は、いつも胃がキリキリして心臓が止まりそうなくらいハラハラドキドキしながら見ているので、今回、優勝が決まった瞬間には一気に力が抜けてふにゃふにゃになりました。昔から、自分の試合より夫の試合を見ている時のほうが緊張するんですよね。それに、自分が観戦していると負けるような気がして、見るのが怖かったりとか……。そんな葛藤の中でも、最後まで夫の勝利を信じて見守ることができました。こういう姿を見せられると、私自身もどんどん忙しくなってはいるけれど、それでも「もっとサポートを頑張ってあげたいな!」と思いますね。
育成してきた若手選手らも目覚ましい活躍
二つ目のうれしかったことは、所属選手たちの活躍シーンがどんどん増えていることです。例えば、19年5月18・19日に日本野球機構(NPB)の主催で開催される、「NPB eスポーツシリーズ スプラトゥーン2」というゲーム大会への出場です。「スプラトゥーン2」(任天堂)はNintendo Switchのゲームソフトで、年齢を問わず大変多くの人たちに楽しまれているアクションゲームです。大会では4人でチームを組み、2つのチームが地面をインクで塗り合い、3分間で塗った面積が大きいチームが勝利するというルールで戦います。
この大会の出場者はスプラトゥーン2の公式大会「第4回 スプラトゥーン甲子園 2019」に出場したチームの中からスカウトされ、書類審査・面接・実技審査を経て、19年3月3日に実施されたドラフト会議にて各球団の代表選手として選出されました。その中に所属選手の名前がたくさんありました。その模様はテレビで放送されたり新聞記事になったりもして、選手たちの活躍の場が広がっていることにとても喜びが込み上げました。自分のことのように……いいえ、自分のことよりもうれしかったものです。
また所属選手の一人である22歳の〈ジョニィ〉選手は、先ごろアメリカで開催された世界各国のプロ選手たちが多数参加する大会で3位に入賞しました。
彼は忍ismがプロゲーミングチーム運営を始める前に行っていた育成企画から関わっている選手で、19歳の時に応募してきてくれました。この企画では3人の選手を採用し、まずは2年間、師弟関係を結んで活動を共にしたのです。当時中学3年だった〈ハク〉選手、中学2年の〈ヤマグチ〉選手、19歳の〈ジョニィ〉選手が所属となり、海外大会に同行させて日本とは違った空気感や外国人プレーヤーの雰囲気などを実際に経験してもらったり、ゲーム実況の生放送に出演させて人前で話をすることに慣れてもらったり、一緒に練習したりしてました。
そして18年3月、「Team不動」が発足すると、各選手は育成選手からプロ選手にステップアップ。その後も多くの海外大会にエントリーして、試合経験をどんどん積んでもらうことになりました。しかし、ベテラントッププレーヤーたちの壁はとても厚く、昨年は思うように結果を残せませんでした。どうしたら壁を破ることができるのかと若い選手たちが頭を悩ませているところを見てきましたし、私自身もどうサポートすればいいのかなぁと悶々していました。やはり経験の差が大きいので、経験を重ねていくしかないか! 今年もじっくり応援していこう――そう思っていた矢先のことでした。
海外大会開幕戦のアメリカ大会「Final Round 2019」でトップ8に〈ジョニィ〉選手が残りました。〈ももち〉も残っており、「このまま両名が勝ち進めば師弟対決になるかもしれない!」と観客も私もワクワクしていました。