今回は、ブログから読み解く百地裕子ヒストリー。格闘ゲームファンの中にはもしかしたらご存じの人もいるかもしれない、2009年から13年まで書かれていたブログ「チョコブランカの前歯で噛み付くゾ★」(12年以降は「チョコブランカの前歯で噛みつくぞっ★」に改題)。プロゲーマーになる前の若かりし頃から、夫〈ももち〉と歩み始めたプロ生活の日々まで、楽しかったこと、大変だったことなど心に残った記事を自ら読み返し、当時の思い出や今だから書ける感想を紹介する。
「チョコブランカの前歯で噛み付くゾ★」
2018年の年始、私は「今年は初心を大切にし、知識や経験を積み重ねる年にする」という一年の計を立てました。なのでいろいろな本を読んだり、調べものをしたりして、仕事に関する知識を増やす時間を大切にしています。また“初心忘るべからず”ということで、プロゲーマーになる前や、なりたての頃の気持ちを思い返す機会も大事にしています。
そこで今回はちょっと気恥ずかしさもあるのですが、昔、私が書いていたブログをご紹介しようと思います。若さ故の“痛さ”がふんだんで、読み返していると肌がぞわぞわするのですが、初心を思い出すため、あの頃の気持ちを思い出すために、覚悟を決めてみなさんに披露します。
初期のブログは「チョコブランカの前歯で噛み付くゾ★」(09年9月〜12年1月)。私なんか、タイトルを見ただけでもうぞわぞわしてきます。
ちなみに、このタイトルにした理由は二つあります。一つは、私のプレーヤーネームにもなっている〈ブランカ〉という「ストリートファイター」シリーズのキャラクターで、彼は投げ技を決める前に相手にガブガブと噛み付くのです。そこから“噛み付くゾ”にしました。
ではなぜ「前歯で」なのか? それは私の前歯が大きく出ているのを自らいじったものです。“出っ歯”は私の顔の特徴でもあるので分かりやすいし、幼い頃からこうして開き直ることでコンプレックスを打ち消してきました。最近は前歯をチャームポイントにしている女性タレントさんもいますが、多感な時期の女の子にとって、あまり見栄えよく感じられるものではありません。今でも私のことを「不細工出っ歯おばさん」なんて、生放送のコメントやTwitterなどでからかう人もいます。
そんな時、大っぴらに「ああそうだよ! 出っ歯だよ!」って開き直るととても楽になるんですよね。自分の風貌を自らいじると、他人から何か言われた際に「そうそう、横顔、自分でも見るとめっちゃしんどいねん」とかって笑いに変えることができます。最初は一種の自己防衛でしたが、続けていたらいつしか気にもならなくなって、「歯が出てるお陰で笑顔作りやすいわー」なんて逆に気付くこともできました。今では「むしろ私から出っ歯を取ったら、見た目の特徴が全然なくなってしまう」と思うくらい自分の“出っ歯”が好きです。
とまぁ、そんな思いが詰まっているので「前歯で噛み付くゾ★」にしたわけです。タイトルの説明が長くなってしまいましたね。ではでは記事を見ていきましょう。
http://blog.livedoor.jp/chocoblanka/(外部サイトに接続します)
https://ameblo.jp/chocoblanka(外部サイトに接続します)
ジャスティン、マーン、アレックス、キム登場
このブログで一番古い記事は09年9月です。この頃の私は、まだプロゲーマーではありません。春に名古屋の大学を卒業して自動車ディーラーに就職し、社会人一年目でした。記事には初めて見に行った「闘劇(とうげき)」で出会った、外国人プレーヤーのことが書いてありました。「闘劇」とは対戦型格闘ゲームの全国大会の一つで、03年から12年まで毎年1回開催されていました。日本各地のゲームセンターでトーナメント方式の予選大会が開催され、そこで優勝した人のみが参加できます。当時、格闘ゲームに熱中していたゲーマーたちの、憧れの晴れ舞台でした。09年大会の本戦は東京都文京区の「JCBホール」(現在の東京ドームシティホール)で開催され、外国人プレーヤーの出場枠もあったので、日本人だけでなくゲームが好きな外国人も参加していました。
その「闘劇」を通じて、〈ジャスティン〉〈リッキー〉〈マーン〉〈アレックス〉など、今でも親交の深いアメリカの有名プレーヤーたちと偶然、仲良くなったんですよね。〈ジャスティン〉と〈リッキー〉は、この頃既に北米のプロゲーミングチーム「Evil Geniuses(イービル・ジーニアス)」に所属するプロゲーマーでした。この連載でも何度か登場している「Evil Geniuses」は、私が初めて所属したプロゲーミングチームでもあります。
なぜ彼らと仲良くなれたかというと、私が「闘劇」を観戦しに行く前日に立ち寄った東京都内のゲームセンターで巡り会ったのがきっかけでした。私が得意の「ストリートファイターⅣ」(カプコン)をプレーしていたら、「女の子で〈ブランカ〉を使うなんて珍しいね」って〈ジャスティン〉と〈マーン〉が声を掛けてくれたんです。
そもそも女性プレーヤーが少なかった時代に、〈ブランカ〉という緑色のモンスターキャラを使うなんて、と驚きのあまり声を掛けたみたいです。私は当時、海外ドラマにハマっていましたし、昔から洋楽が好きで海外の文化や人にも憧れを抱いていました。だから外国人プレーヤーとゲームを介して交流できたことをとても嬉しく感じ、一瞬で仲良くなりました。夕食にも誘ってくれて、一緒にご飯を食べたり、その後ゲームセンターで対戦したり……。彼らはとても良い体験を、私にもたらしてくれました。
私がプロゲーマーになるきっかけになったのは、某大会で有名選手を倒したということもありますが、実は〈ジャスティン〉がこの時の私のことを覚えていて、チームのオーナーに推薦してくれたことも一つにあります。チームのオーナーが、新しく雇うか検討中の選手について、既に所属している選手に意見を聞くのはよくあることです。なので当時の私が〈ジャスティン〉たちと知り合えたのは、本当に運が良かったのです。
その時の感想が、09年9月11日付の記事に書いてありました。
「ジャスティン、マーン、アレックス、キムと対戦もしたょ★/マーンのルーファス(注 : 「ストリートファイター」シリーズに登場する、アメリカ人格闘家のキャラクター)には開幕2連勝(*”人)ワォ☆/そしたらマーンが『Imパンピー』てずっと言ってましたw/パンピー(注 : 一般ピープル=一般人を意味する1970年代の日本の流行語)って言葉、流行ってましたw」
今でも〈マーン〉は私と会うと、ハグと共に「Hi! I’m パンピー」と不思議な挨拶をしてきます。今年(2018年)、アメリカで開催された大会で会った時もそうでした。10年近くもこれを続けているなんて……なんだか感慨深いです。
それにしても、じっくり読み返すと自分のことを「チョコは――」と書いていたり、半角変換したカタカナを多用したりしていてとてもぞわぞわしますが、素敵な出会いのことを思い出させてくれる記事でした。
大福に牛乳が合う合わないで、小競り合い
次に気になったのは、2009年12月13日の記事。