感謝は関係性の中で生まれる
親の機嫌を損ねないために、少しでも親が自分にいい印象や関心を持ってくれるように、少しでも暴力を振るわれて痛い思いをしなくて済むように、などと思ってカーネーションを贈る子どもたちもいる。そんなことを考えずに、親にただ感謝できたらいいのにと思いつつ。
そんな子どもたちに「そのままでいいよ」と言える大人が増えてほしい。そんな子どもがいることに、想いを馳せる人が増えてほしい。そんな子どもたちの存在を認められる社会になってほしい。私も、親との関係が複雑な中高生たちと、「母の日だるいよね」と話した。「わかる、わかる」とうなずく女の子たちに、私も「それでいいんだよね」と励まされた。
「いつも惜しみない愛情を注いでくれるお母さん」ばかりでないことを知ってほしい。そんな余裕をなくしたお母さんたちが、たくさんいることを知ってほしい。お母さんたちも孤立していることを、子どもたちは感じている。「ママを一人にしないで」と言われて、自分がそばにいてあげなければと思ってそこから逃れられない子どももいる。だから、そんな子どもたちのお母さんのことを支えてくれる人が増えてほしい。
先日、女子高校生サポートセンターColabo(コラボ)で支援する女の子が出産した。出産には私も立ち会い、これから赤ちゃんの成長を支えていきたいと思っている。子育ては子どもから感謝されるためにするのではない、と赤ちゃんを見ていて思った。大人たちこそ、赤ちゃんのおかげで初めての経験をし、成長させてもらっている。
Colaboの活動も同じだ。相談者に感謝されるために活動しているのではない。一人ひとりが安全な環境で、安心して、自由な気持ちで、自分の道を生きられるようになったら、それが一番うれしいことだと思っているし、そのための手伝いを少しでもできるなら、そのことに私は感謝したい。