ウイルスではありませんが、最近でも日本の研究チームが、深海の栄養分が乏しい玄武岩に大量の微生物が生息していることを発見し、火星に生命が存在する可能性を示唆しました。未知の病原菌や生物は、まだこの世に多く存在することでしょう。
ベストセラーとなったジャレド・ダイアモンドの『銃・病原菌・鉄』(草思社文庫、2012年)が説くように、ウイルスは社会の進化や発展と比例して人間にとってより大きな脅威となってきました。人間の活動の範囲が広がり、社会が複雑になればなるほどにウイルスは拡散されやすく、退治しにくくなるからです。この事実は、ウイルスと私たちがこれから無縁ではありえないことを意味しています。
専門家は、感染症を撲滅するのは無理であり、それゆえ共生の道を探るしかない、と端的に言い切っています(山本太郎『感染症と文明』岩波新書、2011年)。未知の脅威とどのようにすれば共生が可能となるのか。それは、今あるこの社会をより強靭(きょうじん)にすることです。例えば、コロナウイルス感染が止まらないイタリアやスペイン、アメリカは過去数年で、保健衛生に関わる人員や予算を大幅に削減しました。日本も保健所の数などをここ20年ほどで大きく減らしてきました。つまり、人間の健康や命を普段から守ることのできない社会は、ウイルスに対しても脆弱(ぜいじゃく)な社会であり、共生どころか消滅してしまう可能性があります。人間同士が協力し、それぞれを大切にするという当たり前のことができるかどうか――感染症を題材にした映画が問いかけているのは、そのことであるようにも思えます。
感染症を題材にした映画のベスト10
『トゥモロー・ワールド』(アルフォンソ・キュアロン監督、2006年)
『12モンキーズ』(テリー・ギリアム監督、1995年)
『28日後...』(ダニー・ボイル監督、2002年)
『ボディ・スナッチャー/恐怖の街」(ドン・シーゲル監督、1956年)
『第七の封印』(イングマール・ベルイマン監督、1957年)
『赤死病の仮面』(ロジャー・コーマン監督、1964年)
『ザ・クレイジーズ』(ジョージ・A・ロメロ監督、1973年)
『アンドロメダ…』(ロバート・ワイズ監督、1971年)
『アウトブレイク』(ウォルフガング・ペーターゼン監督、1995年)
『暗黒の恐怖』(エリア・カザン監督、1950年)
(出典:TIME「Top 10 Epidemic Movies」)