斎藤 死生観ですか? そこまでは……。依存している状態ですから、いなくなった時のことはおそろしくて今はまだ想像できません。あまり考えないですね。
加藤 本当にただの猫好きじゃないですか(笑)。
斎藤 はい、ただの猫好きです(笑)。まだまだ猫初心者ですから。そう言えば、僕はヤンキーを分析した本を何冊か書いているんですが、それも猫を飼ってから書きたくなったのかもしれませんね。
加藤 ヤンキーと猫って、どういう接点があるんですか?
斎藤 ヤンキーって犬好きじゃないですか。犬好きは犬を従わせたい、言うことをきかせたいというのがあって、ヤンキーの縦社会みたいだと思ったのです。リーダーがいて序列があって。猫を飼ったから、犬好きの人の生態が気になるようになったんです。
加藤 犬好きと猫好きってそんなに違うものですかね? 芸術家に猫好きが多いとは言いますが。
斎藤 そうですね。芸術家は他者を支配しようとはあまり思わないし、自由人たる自我を猫に投影しやすいのかもしれません。
加藤 私は犬も猫もかわいいと思いますけどね。
斎藤 以前、犬も飼っていましたから、僕も犬は嫌いじゃないですよ。でもハマると言えばやっぱり猫なんです。妻と二人でチャンギの写真でカレンダーを作ったり、チャンギは女の子だからひな人形を買ってあげたり。いろいろやりました。
加藤 すごいハマりっぷりですね(笑)。でも今日の先生を見ていてよくわかりました。
斎藤 あ、あと、もう一つ変わったことがありました。今日の取材もそうですが、僕は「猫文化人」として取り上げられる機会が着実に増えています。猫文化人になると、ネットでたたかれにくくなる。あいつは猫好きだから許しておこうみたいな。それも変わったところかな(笑)。
◆一筆御礼 ~対談を終えて
最近の猫ブームがネットの影響だという話には「目からウロコ」の思いでした。ネット社会が多岐にわたる文化を新たに生み出すことを改めて実感しました。また、チャンギちゃんの何かを言いたげな大きな目を見ていたら、猫が萌えの対象だという意味も理解できました。多分、チャンギちゃんが無口であることも、その要素の一つになっているのだと思います。いつも何かを主張している“おしゃべり猫”の場合には萌える余裕がないだろうと思えるからです。現に、うちの猫は人の顔を見ながらダミ声でわめき続けますから、そのうるささに「燃える」のみです。最後までわからなかったBLと腐女子については後日、『風と木の詩』の文庫10巻セットを古本屋で購入し、「しっかりと学習」しました。おかげで今、「入り口が開いて」立派な貴腐人になっています。先生の言う「8割」中の一人です。
撮影:慎芝賢