◆一筆御礼 ~対談を終えて
ますむらさんの著書『イーハトーブ乱入記-僕の宮沢賢治体験』(筑摩書房、1998年)は、「銀河鉄道の夜」の“謎解き”に挑戦した本でドキドキしながら読めること請け合いですが、同時に彼の心の奥底に脈々と流れ続けるものが見えてきます。それは、賢治と同じ東北生まれのますむらさんの中にある、賢治と同じだと思える心象風景です。その心象風景に根ざしているのは「自然の中の人間はどうあるべきか」という素朴で真摯(しんし)な問いなのだと思います。ますむらさんの漫画にも、常にその問いがバックにあり、その答えを“人間のような猫”であるヒデヨシが模索しているのです。模索するための空間がアタゴオルで、ヒデヨシは人間と自然との間を結ぶものとしての象徴なのです。だから、かわいくなくても仕方がありません。ますむらさんと暮らしているのは、文句なしにかわいい実在の猫たちで、ますむらさんも普通の「猫好きオジサン」でした。
撮影:橋詰かずえ
*の写真はますむらひろしさん提供