これは戦後、他国に比して、海外派兵に慎重な立場を取ってきたドイツも同様である。
また、例えば、ドイツの保守政党CDU党首であるメルケル首相は2022年までに国内すべての原子力発電所の運転を停止すると決めており、その意味では、日本の自民党より進歩的である。
ドイツの社会保障制度は世界有数であり、医療費は保険の適用範囲内であれば原則無料である。国民皆保険制度の導入に対して強い反発が出るアメリカとは比べるべくもなく革新的である。日本でも、国民皆保険をなくそうとすれば、自民党支持層からも反対の声が上がると考えられ、この点でも、日本の保守とアメリカの保守は全く異なる。
メルケル首相は、トランプ大統領の極端な発言に苦言を呈して、今や世界の自由・民主主義陣営の価値観をアメリカに代わって引っ張っている感があるが、メルケル首相はドイツの保守政党CDUの党首である。
こうしてみると、ドイツの保守は、安保・軍事、社会保障、エネルギーなど多くの分野でアメリカのリベラルよりもリベラルである。とすると、ドイツのリベラル政党にはアメリカに価値観を同じくするカウンターパートがいるのだろうか。私は、政権与党である社会民主党(SPD)の財団にこの質問をぶつけてみたところ、以下のような答えが返ってきた。
「(価値観をともにするカウンターパートを見つけるのは)簡単ではない。しかし与えられた条件でやるしかない。民主・共和両党との関係を築くようにしており、テーマによっては共和党と組むこともありうる」
とはいえ、SPDであれば、やはりアメリカでは民主党とパートナーを組むことが多く、民主党の中でも、プログレッシブ・コーカス(進歩的議員連盟)、ブラック・コーカス(黒人議員連盟)等との付き合いが深いということはある。しかし今回訪問したどの財団でも、アメリカの政党との関わりを問うと、アメリカの民主・共和両党との関係を重視していると答えた。
各財団を訪問してみると、ドイツが直面している具体的な外交問題について、それぞれ独自にアメリカの政府や政治家へ柔軟な働き掛けをしていることが分かった。次回は、大使館とは別に政党がワシントンにオフィスを持つ必要があるのか、政党外交の意義について、引き続きドイツ各政党の財団への聞き取り調査を基に考えてみたい。