バイデン政権となれば、トランプ政権よりははるかに彼ら知日派の希望に沿う外交方針が採られることは間違いないが、4年前に針が戻るわけでもない。相対的にアメリカは国力を落とし、トランプ支持者の影響力は今後も国内に色濃く残るだろう。
この報告書には、そうした中で「古きよき」日米同盟のあり方を信じる米識者が、同じく「古きよき」日米同盟を信じる日本の外交・安保関係者を通じた「逆拡声器」を使って、それを実現していこうという意図がある。
最後に
日本がリーダーシップをとる日米同盟になったというこの報告書の評価に対して、日本の私たちは、「対等な日米同盟」と喜び、与えられた提言を受け入れて実践していくのだろうか。
中国・北朝鮮の近隣にある日本は、アメリカとは置かれている条件も環境も異なる。自衛隊と米軍が「相互依存」となり、今以上に自衛隊が米軍組織に組み込まれたとき、米国の戦争に巻き込まれることはないのか。地域の平和は維持できるのか。
「対等」になったと言われる今こそ、国内で自由に議論し、異論があればアメリカに物申せる私たちでありたい。
※「第五次アーミテージ・ナイ報告書」は、以下のCSISのウェブサイトよりダウンロードすることができる。
https://www.csis.org/analysis/us-japan-alliance-2020
第五次アーミテージ・ナイ報告書
米シンクタンクの戦略国際問題研究所(CSIS)が発行する超党派の有識者による提言。リチャード・アーミテージ元国務副長官とジョセフ・ナイ元国防次官補が執筆陣の共同代表を務める。