財務省のセクハラ問題に対する麻生太郎大臣の「ハメられたのでは」なんて発言が象徴するように、もう一部の高齢男性には絶対わかってもらえないので、そういう人たちが責任ある立場から退いてもらうのを待つしかないのでは、なんて声もある。
「そうかもしれない」と、私も最近まで思っていた。しかし、「いや待てよ」と思い直した。
なぜなら、本気で「どうしてセクハラや女性蔑視がいけないのか」を理解していない人は、当然、一線を退いたって同じことを繰り返すからだ。
それが起きているのが介護現場である。
一部利用者による職員への暴力、暴言、セクハラはこれまでも問題となり続けてきた。6月に発表された「日本介護クラフトユニオン」のアンケート結果によると、介護職員の74%が、利用者やその家族からハラスメントを受けたことがあると答えたという。顔に唾を吐きかけられたり、「死ねばいい」「バカ」「クズ」などと言われたり、だ(朝日新聞、18年6月22日「顔につば、『バカ』『クズ』と暴言 介護職の7割が被害」)。
また、そのうち4割はセクハラを受けたことがあると回答。不必要に身体に触られる、性的な冗談を繰り返される、調理中に後ろから抱きつかれる、性的関係を強要されるなど、被害の内容は様々だ。中には、利用者当人ではなく、利用者の息子に寝室に連れ込まれ、触られたという報告もある(朝日新聞、18年8月2日「介護セクハラ、実態調査へ 利用者から職員被害」/同30日社説「介護セクハラ、深刻な現実 対策を急げ」)。
入浴や排泄、着替えなど触れ合う機会も多い上、訪問介護などは利用者もしくはその家族と密室で過ごすことになる。「自分の家で介護や家事労働をする女性」に対して、「下に見る」男性が一部存在することは残念ながら事実だ。だからこそ、介護されるほうにも教育が絶対に必要だ。なぜ、ハラスメントがいけないのか、はっきりとそこから理解してもらわなければ安心して働くことなどできない。
多くの人が知る通り、介護職には女性が多い。そしてサービス利用者と介護職員という圧倒的な力関係がある上、相手は高齢者という「弱者」性を持っている。この問題が内包するのは女性差別だけではない。現在、介護の現場では外国人も働いている。その多くが、アジアから働きにきている人々だ。
女性蔑視にアジア蔑視が加わったら。そう思うと、本当に思考停止したくなってくる。
自分の大切な人には被害者になってほしくないのと同時に、自分の大切な人に加害者になんてなってほしくない。もし、自分の親が高齢で施設に入ってそんなことをしたらと思うと、泣くに泣けない。だからこそ、多少の摩擦は起きても、上の世代に言葉を尽くすべきなのだと、今、改めて思っている。子どもに「道徳」とかを教える以前に、この国には性教育が必要な大人が山ほどいるのだ。
次回は11月7日(水)の予定です。