朝日新聞の記事(2014年3月20日付)によれば、「別れた腹いせに、以前の恋人や配偶者の裸や性行為をネット上にさらす」ことだという。IT(information technology)大国であるアメリカで深刻化し、日本でも法規制の議論が始まっているそうだ。
インターネット上に、自分の裸体の写真が出回り、回収は困難――。しかもフルネームや職場、住所などの個人情報まで同時にさらされ、場合によっては職場の上司などの元にまで写真が送りつけられる。
考えただけでも、身震いが止まらない。というか、個人に対する究極の「テロ」である。
このことによって、精神的に破壊されてしまったり、自殺に追い込まれる人だっているだろう。いくらひどいフラれ方をしたとしたって、絶対にやってはいけないことだ。
と、ここまで書いたところで、ふと思った。
だけど「そういう写真」って、そんなに簡単に人に撮らせたり、自分で撮って送ったりするものなのだろうか?
いや、決して「さらされた人は自己責任」みたいなことをいいたいわけではない。ただちょっと、素朴な疑問が生じただけなのだ。
いくら恋人や夫と言ったって、いつ別れるかなんてわからない。その時、相手が裏切らない保証などまったくない。別れなくたって、たまたまパソコンから写真が流出してしまったり、ケータイやデジカメなんかだったら落としてしまったり、という初歩的なトラブルだってあり得るのだ。
そんなリスクが山ほどあることを承知のうえで、なぜ、一部女子は「撮影をOK」するのだろうか?
お願いされて、嫌われるのが怖くて断れないから? それよりも、もっと軽い気持ちで? もしくは、純粋に、撮られるのが好きってこと?
そんなことがやたらと気になるのは、最近、同世代女子にある相談をされたからである。その相談内容はというと、「付き合ってる相手にハメ撮りをお願いしたら引かれたんだけど、どうしたらいい?」という、どこから突っ込んでいいのかわからないものだった。
ちなみに、彼女と会うのは数回目。突っ込んだところで「シモ」の話をするのも、その日が初めてだった。しかし、話しぶりから察するに、彼女にとっては「行為をしながら撮影」というのは至って普通のことらしく、なんとなく言葉を濁してその話題は終わった。
一体、私はあの時、なんと答えたらよかったのだろう?
そんな無防備な女子がいる一方で、私のまわりの一部男子は、「鉄の防御」を貫いている。まぁ、職業がいわゆる「人気商売系」の枠に該当する人々なのだが、彼らと話していると、時に自分の脇の甘さを突きつけられる。
例えば、ある人気商売系の男子。
彼は、女子とそういう展開になったとしても、「絶対にお泊まりはしない」と断言していた。なぜなら、「寝顔写真」を撮られたらアウトだから。同業者の中には、うっかり寝てしまい、その写真があっという間にネットで拡散。パブリックイメージとあまりにかけ離れた写真の流出によって、いろいろと取り返しのつかないことになった、というケースもあるという。
たった1枚の写真が、時に仕事や人生を台無しにしてしまうのだ。
別に、こっぴどいフリ方をするとかの悪いことをしたわけでもないのに、知名度ゆえに面白がられて、さらされる人々。そういえば、昔、ある人気商売系の男子と付き合ったことがあるが、1年以上続いたのに彼とのツーショット写真は2、3枚しかなかった。それぐらい、撮影には慎重なのだ。
そんな男子たちの慎重ぶりを知っていただけに、「リベンジポルノの被害に苦しむ女子」という記事を読んだ時、「いや、それ無防備すぎるよ!」と思わず叫んでしまったのだった。
ちなみに私の「付き合う相手の条件」の中で、もっとも上位にくるのは顔でも収入でも職業でもなく、まずは「ストーカーにならない人」。その次は、「別れるのが簡単そうな人」だ。
ものすごくモテるか、ものすごく淡白か、ものすごく性格が適当だったら、おそらく執着などしてこない。そして、ごく当たり前に「自尊心」があり、ごく自然に自分にも他人にも「承認」されていれば、きっとストーカーにはならないだろう。
しかし男女問わず、今のこの国で、「自尊心」や「承認」を自然に獲得できている人は、あまりにも少ない。みんながどこかで深く傷つき、承認されることに飢えている。「恋愛」はそれらの欠落を、時に鮮やかに埋めてくれる。その落差が大きければ大きいほど、「万能感」に似た感覚を、決して手放したくないと思う。
そうして一部の人は、去っていく相手に対し、殺意すら抱いてしまう。そのゆがんだ思いの表出が、リベンジポルノなのだろう。
フラれると、誰だって辛い。死にたくもなるし、何もかもを恨んでしまいそうになる。別れ方によっては、相手への憎しみで全身の細胞がわき立つぐらいのこともあるだろう。
だけど、だからといって、「腹いせに嫌がらせをする」のは、やっぱり人として最低だと思うのだ。リベンジポルノに限らず、腹いせ系のすべての行動は、やった本人をも不幸にする。まずは、「次の恋愛」の機会を遠ざける。
一体誰が、「過去の恋人に嫌がらせをした経験のある人」と付き合いたいと思うだろう。自分から「絶対に惚れてはいけない」というレッテルを、自分に貼ってしまうようなものなのだ。
しかし今の世の中には、残念ながら、恨みでいっぱいになってしまうストーカー予備軍がたくさんいる。
だからこそ、ちょっと無防備な女子たちに、呼びかけたい。「人気商売系男子ぐらいの緊張感を持ち、撮影行為には敏感になろう!」と。
あなたの恋人がストーカーにならない保証は、残念ながらないのだから。
次回は5月8日(木)、テーマは「マイナスオーラに抗う」の予定です。