投資の世界にも、「団体ツアー」がある。それが「投資信託」だ。投資とは、自分のお金を株式や債券、不動産など、様々なものに向かわせること、つまりお金を旅に出すことにほかならない。旅行の楽しみに相当するのが、投資によって得られる収益だが、どこを訪れるか、時期はいつかによって、得られる楽しみ、つまり利益が大きく左右される。その上、変なものに投資すると、利益どころか元本割れ、場合によっては、投資した会社がつぶれて株式が「紙くず」になるなど、旅先から無事に戻ってこられない場合もある。こうしたリスクは、自分で投資対象を決める「個人旅行」で、より大きくなる。
そこで登場したのが、ファンドとも呼ばれる投資信託である。投資信託は、団体旅行と同じように、多くの人からお金を預かり、専門知識を持つファンドマネジャーが、ツアーコンダクターとなって、素晴らしい旅、つまり高い収益をもたらしてくれるというわけだ。
投資信託は、その投資先や方法によって、様々なコースが用意されている。株式に投資する「株式投信」や、国債などを中心とした「公社債投信」など、さらに「中国株ファンド」などといった海外の株式や債券に投資するものも用意されている。また、「元本重視型」「利益追求型」など、投資方針についても様々な種類があり、これらを組み合わせた「ベトナム株利益追求型ファンド」といった多様な投資信託がある。証券会社の窓口には、投資信託のパンフレットがずらりと並んでいて、その様子は、団体ツアーのパンフレットが並ぶ旅行会社そっくりである。
投資信託を購入すると、その成果によって、分配金などの形で利益が還元される。すべてはファンドマネジャーの手腕にかかっていて、もちろん元本割れのリスクもある。自分の大切なお金を、どの投資信託という団体ツアーに参加させるかは、きわめて重要な判断となるわけだ。
投資信託には、不動産に投資するREIT(リート real estate investment trust)、貴金属や原油、農産物などを対象とした商品ファンドなど、多種多様なものがある。また、企業の株式を単純に買うだけではなく、企業買収を行ったり、経営陣に様々な要求を突きつけたりする企業買収ファンド(村上ファンドやスティール・パートナーズなどがその典型)、経営不振の企業に投資し、その再生を目指す企業再建ファンドなども、投資信託のカテゴリーに入る。また、弱っている企業に襲い掛かり、解体して利益を上げようとするハゲタカファンドも、巨額の資金にものを言わせ、時に市場を混乱させることもあるヘッジファンドも、投資信託の一種なのである。
投資信託の数は実に多く、少額でリスクの少ない投資を行う「日帰りバスツアー」のような手軽なものから、一口1000万円、リスクの高い投資先を選ぶ「秘境ツアー」のようなものまで、千差万別だ。
個人で投資先を選ぶより、腕利きのファンドマネージャーに任せて、投資を楽しむ。「投資の団体ツアー」である投資信託は、今後、さらにすそ野を広げることになりそうだ。