相手チームはすべて格上?
2010年6月14日(月)16:00(日本時間23:00)対カメルーン(ブルームフォンテーン)、6月19日(土)13:30(日本時間20:30)対オランダ(ダーバン)、そして6月24日(木)20:30(日本時間25日03:30)対デンマーク(ラステンバーグ)。「2010FIFAワールドカップ南アフリカ」の日本のグループリーグでの試合日程が決まった。現在FIFAランキング3位のオランダを第1シードとしたE組には、同11位のカメルーン、28位のデンマーク、そして43位の日本がはいることになった 。
「オランダが圧倒的に強い。2位争いはカメルーンとデンマーク」。世界のメディアではこうした予想が多いが、「オランダ以外は、横一線」という見方もある。
高速のエトーをいかに押さえるか
カメルーンは過去5回の出場経験をもち、選手の多くはヨーロッパのクラブで活躍している。ヨーロッパ勢さえ圧倒する個々のフィジカルの強さに、ヨーロッパのクラブで仕込まれた組織的なプレーも身につけている。そのうえに、FWエトー(インテル・ミラノ=イタリア)という大エースがいる。エトーの特徴はスピードにある。スルーパスに合わせてDFラインの背後に抜け出し、正確無比なシュートで得点する。日本のセンターバック、中澤佑二と闘莉王は、いずれもスピードがあるとは言い難い選手なので、両サイドバックのカバーが欠かせない。
一方、強力な攻撃陣と比較すると守備は不安な要素が多い。とくに右サイドから強引に攻め上がるジェレミ(ニューカッスル=イングランド)の背後のスペースは有効に活用できるはずだ。
タレント揃いのオレンジ軍団
オランダはヨーロッパ予選で8戦全勝という強さを誇示している。このチームも攻撃陣にタレントを並べており、FWファンペルシ(アーセナル=イングランド)、FWロッベン(バイエルン・ミュンヘン=ドイツ)、FWフンテラール(ACミラン=イタリア)、攻撃的MFスナイデル(インテル=イタリア)など、超一流クラブで中心選手になっているアタッカーたちが並ぶ。小柄な選手を並べ、前線から激しくプレスをかけ、ボールを奪うと細かなパスを多用して攻める日本のサッカーは、世界では例を見ないもの。対戦国はとまどうはずだが、オランダは09年9月に日本と対戦、その特徴を知り尽くしている。それだけに、日本としては非常に戦いにくい相手となるだろう。
デンマークの若き巨人
第3戦の相手、デンマークは、日本ではあまり知られていないが、ポルトガル、スウェーデン、ハンガリーらがはいったヨーロッパ予選の第1組を6勝3分け1敗の1位という好成績で突破したチーム。予選10試合で失点わずかに5という堅固な守備が持ち味だ。北欧のチームというと、体は大きいが細かなテクニックはないと思われがちだが、デンマークは伝統的に高い技術をもった選手が多く、それをチームプレーに結びつけた美しいパスワークで知られている。そして今回は伸び盛りのFWベントナー(アーセナル=イングランド)を中心に攻撃陣の破壊力も無視できない。
1988年1月16日生まれ、ワールドカップ時に22歳のベントナーは、190cmという長身、がっしりとした体つきを生かしたポストプレーだけでなく、スピードと強引なシュート力で、アーセナルでぐんぐん伸びてきた選手だ。
変わったクロスの質
さて、世界の多くのメディアから「最下位候補」とされる日本は、2009年6月に予選突破を決めた後、9月にはオランダと、そして11月には南アフリカと、アウェーで強豪と戦ってきた。そのなかで強調されたのが攻撃面の効率アップだった。オランダ戦までの日本代表は、サイドは突破できても、そこからのクロスをなかなかシュートに結びつけることができなかった。クロスを入れても相手DFにやすやすとはね返されてしまうのだ。その反省から、「速く低いクロス」とそれに合わせて中央に飛び込む形を11月まで徹底して練習し、試合で多用した。クロスの質を変えたことで、日本の攻撃は、相手ペナルティーエリアに近づいてから急激にスピードアップされるようになった。
ただ、それでも、ワールドカップレベルのチームを相手にしたときに日本がコンスタントに得点できるところまではいっていない。9月にオランダで行われたガーナ戦は1-3から逆転して4-3の勝利を収めたが、それは3日前にホームで試合をしたばかりのガーナの運動量が試合終盤に極端に落ちたためだった。
生き残るための体力
オランダを後半24分まで0点に抑えたチーム守備、最前線からの激しいプレスと集団での囲い込みを90分間持続させることが、生き残るための基本的な条件になる。そのうえで、ボールを奪ったら、日本の最大の長所である中盤のキープ力(日本には中村俊輔、遠藤保仁、長谷部誠という強力なトリオがいる)を生かしてしっかりとパスをつなぎ、サイドでポイントをつくったら速く低いクロスを入れて中央に何人もの選手が飛び込んで1点を奪う――。そんなサッカーができれば、勝ち点を挙げることができるに違いない。どんなサッカーをするかの共通理解、選手同士の相互理解は、すでにしっかりとできている。「戦えるチーム」になれるかどうかは、90分間走り抜き、それを少なくても3試合続けるコンディションづくりが非常に重要な要素だ。
クラブの日程をこなしながら、選手たちはワールドカップで通用する体力づくりに励まなければならない。そして最終的には、5月中旬からの最終合宿で、どこまできちんと体力トレーニングができ、最高のコンディションにもっていけるか――。それができるかどうかが、「生き残り」の明暗を分けることになるだろう。