そこで「平常時」と「いざという時」に分けて、種々の観点から、簡潔にお伝えしよう。ただ、後者の「いざという時」は、デモ、騒乱、地震などの人災・天災によって状況がそれぞれかなり異なる。したがって、的確な情報収集と沈着な行動を期待したい。
中国到着時の心得
到着日がもっとも緊張するので、注意が必要。空港での案内デスクの活用法:入国手続きも無事完了したら、まずは「案内デスク」に行こう。ここでは空港全体・市全体の地図、ホテルなど種々のパンフレットをできるだけ入手しよう。その際には必ず、タクシーの値段などを聞いておこう。
人民元への両替:レシートの出ない両替商は使用しないこと。人民元は帰国時に、中国内の出発空港にある銀行(中国銀行)で日本円に再両替できるが、「両替証明書」の提示を求められる。
タクシー利用:一般的に市内へのアクセスでもっとも便利。空港の到着ロビーの前にタクシー乗り場がある。ぼられないように、相場を事前に確認しておくこと。
旅行中の健康管理&救急の際
特に、「水」と「ナマモノ」には要注意。ペットボトルもコンビニやホテルで購入したほうが無難だ。海の幸のナマモノも控えたほうがいいだろう。屋台はSARS(重症急性呼吸器症候群)以降、かなり清潔になったとはいえ、あまりお薦めはできない。不運にも病気になった場合には、北京や上海には日本語や英語の通じる外国人専用外来の病院がある。到着後、地図で確認するか、下見をしておくことができれば申し分のないところ。パスポートの盗難・紛失
最近中国国内で、パスポートの盗難や紛失するケースが激増中と聞く。日本人は多額の現金、貴重品を所持していると見られ、窃盗犯の格好の目標になっている。また、パスポートは偽造・変造の材料にされる恐れがある。万が一のパスポート盗難や紛失を考え、再発行用の「パスポートコピー」と「写真2枚」を準備しておくこと。中国での治安・安全対策
過度の心配は不要だが、中国の治安はひところより悪くなっていると考えたほうがよい。盗難やスリ:日本人はお金持ちと思われ、日本人とわかれば犯罪者は寄って来る。スリなどにマークされないように注意しよう。まず、多額の現金は持ち歩かないこと。そして、食事中に鞄(かばん)、ポーチ、上着などは絶対にイスの後ろに置かないこと。また、ホテルの部屋も安全とは言い切れない。念のため、荷物にも鍵をかけておこう。
国内交通での安全対策:滞在中は、より安全性のある交通機関を選択しよう。特にタクシーがお薦め。利用の際は、必ず運転手のIDカードを確認して乗ること。また、歩行者としては中国の交通事情や交通ルールが日本と異なるため、事故や事件に至るケースも多い。
繁華街・カラオケetc.での安全対策:北京一の繁華街王府井(ワンフーチン)界隈でも客引きが多い。彼らは、にこにこして巧妙に声をかけてくる。少しばかり中国語のできる人のほうが、むしろはまりやすいという。カラオケで多額な料金を請求される場合や、頼まないのに高価な飲み物を強引にすすめるケースなどがある。また、カラオケに絡む事件で多いのが売買春。中国では売春を行った者、その相手方に対し厳しい罰則がある。
軍事施設の立ち入り・撮影:中国では、観光地のすぐそばに、外国人の「立ち入り禁止地域」や「撮影禁止個所」が隣接していることもある。そういった場所は、特に軍事施設が多く、立ち入りや撮影には機材やフィルムの没収、データの削除だけでなく、身柄拘束に至ることもある。事前に調べておくとともに周囲の看板等には気を配ることが肝心。
競技場での観戦:オリンピックの観戦、応援も過度にならないやり方で行おう。特に、政治色・民族色が鮮明な方式は避けたほうがよい。中国当局は横断幕やそろいのユニフォームなどを禁止し、国旗も大きさに制限を設けている。また、観戦に行く際には、パスポートなどの身分証明書を持参すること。外国人に対しては、警備陣がかなり厳しい。
デモ・騒乱・地震・台風・火事などの災害に遭遇したら:これらの事件に巻き込まれたら、まずどのような状況なのかを把握することが、一番大事。しかし、情報統制の厳しい中国では、渦中の本人のほうが全体像はつかめないもの。その際は海外テレビのCNNニュースや日本への問い合わせが有効。それができない場合は、次項で述べる「信頼筋」からの情報を入手しよう。中でももっとも頼りになる存在は、具体的で現場に即した「中国人の友人」情報だ。避難方法については、到着後に入手した詳細な地図で対策を練ろう。大事なのは避難の“足”。デモや騒乱が、多少でも事前に予測されたら、危険地域を脱出し、ホテルから避難場所や最寄りの国際空港までたどり着くために、直ちにタクシーを確保したい。そのためには、滞在中、親切なタクシーの電話番号をもらっておこう。
滞在中の情報収集
現地の情報を得るには、ホテル、旅行会社、加盟クレジット・カードの案内デスクなどを活用するとよい。また、日系航空会社、在中国大使館・領事館、在中国日本商工会議所、在中国日本人会なども重要な情報源だ。加えて、信頼できる中国人情報を活用したい。したがって、中国到着後なるべく早く信頼できる仲間を得ることだ。大使館・領事館の利用法
大使館・領事館は日本人の安全を守ることが大きな任務の1つ。特に「危険情報」が出ている時は、大使館・領事館のニュースに常に注意を。出国に際して
留意すべきは「輸出禁止品」や「持ち出し制限」である。特に、前者には注意が必要だ。街で買った書画骨董の中には、文化財などの指定を受け、海外に持ち出すと犯罪になるものもある。また贋作や法外な価格なども横行する世界なので、特に詳しい人でなければ、避けたほうが無難だろう。以上縷々述べてきたが、だからといって中国旅行への期待は決して萎縮(いしゅく)させないでほしい。これらを「最低限の注意」と考えて行動すれば、魅力的な中国は、きっとあなたを大いにエンジョイさせてくれるに違いない。