少し気になる世論調査結果が目に留まりました。この調査は、日本経済新聞社とテレビ東京が共同で行ったもので、2020年5月8日〜10日にかけて実施されました。
その結果によれば、安倍晋三内閣に対する支持率が49%、不支持率は42%で、3月の前回調査時とほぼ同様の数値になりました。ただ、支持・不支持とも、その理由を巡って大きな変化が見られたのです。まず、支持側についてみれば、支持理由の第1位を占めたのは「安定感がある」で回答率39%でした。これは、3月の結果と変わりません。それに対して、「指導力がある」は回答率が3月から6ポイント低下しました。この半年間、回答率20%前後で安定的に推移していたのですが、今回の調査では13%にとどまりました。第2次安倍政権発足以来、最低の数値です。
不支持側では、さらに顕著な変化が見られました。これまでは、「人柄が信頼できない」や「自民党中心の内閣だから」が常に不支持理由の上位を占めていました。ところが、今回は、これらの回答率がいずれも10ポイント前後の低下となりました。代わって上位に躍り出たのが「指導力がない」で、全回答の35%を占めました。3月比16ポイントの急上昇です。
この結果は、政府の新型コロナウイルス対策への不満や苛立ちを反映したものだと見ていいでしょう。動きが遅い。方針が二転三転する。小さ過ぎるマスク2枚の配布とは一体なんだ。情報開示があまりにも不十分だ。どうして、もっと検査件数を増やせないのか。どうなることが感染収束を意味するのか。状況の推移をなぜもっと数値化した形で示さないのか。等々、様々な不信感が積もり積もって「指導力無し」という評価に凝集したものと考えられます。
この感覚は実によく分かります。「もっとしっかりやれ。まじめに仕事しろ」という思いが、「指導力無し」という判定につながる。これは誠にごもっともなことです。テキパキと陣頭指揮を執るというイメージから、あまりにも程遠い。この姿に「指導力無し」という審判が下る。これは、至極、納得のいくことです。
ただ、ここで一つひっかかることが出てきます。上述の通り、不支持側では、これまで「人柄が信頼できない」が理由の上位を占めてきました。今回は「指導力がない」の回答が急増したので、その分「信頼できない」の回答率は下がりました。
ですが、3月まで人柄が信頼できなかった人が、5月になったからといって、いきなり人柄を信頼できる人に変身するとは考えられません。つまり、安倍内閣不支持者たちは、引き続き彼らの人柄を信頼できないと考えている。そのように推察して大過ないでしょう。ところが、その一方で、彼らには「指導力がない」とも判断している。
ここがいささか気掛かりなところです。なぜなら、この回答結果は、下手をすれば、人柄を信頼できない内閣に対して、指導力の強化を期待しているという風に読めてしまうからです。不支持層さえ、自分たちが指導力を高めることを望んでいる。今回の調査結果を、彼らがそのように読んでしまわないことを祈ります。