「毒と薬は紙一重」といわれるが、私たちの周りには多くの有毒な生物が存在する。花壇を彩るかれんな花にも毒を有するものがある。しかし人間はその毒の中から有効成分を抽出して、特定の病気の治療に用いている。まさに「毒をもって毒を制す」である。(「イミダス1998年版」掲載)
クサノオウ
ケシ科の越年草。林や路傍に普通にみられる。茎を切るとオレンジがかった黄色い汁が出るが、それにはケリドニンやケレスニンなどのアルカロイドが含まれている。粘膜の腫脹、嘔吐、腹痛、呼吸麻痺を起こさせる物質であるが、多量に摂取しないかぎりは大丈夫。干して鎮痛、鎮咳、利尿、解毒の薬として用いる場合もある。
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クリスマスローズ
キンポウゲ科の多年草。クリスマスの頃にバラに似た花を咲かせ、日本では観賞用の栽培種となっている。プロトアネモニン、ヘレブリンという毒性成分が、特に根に多く含まれる。中毒症状は皮膚・粘膜の炎症のほか、強心作用によって腹痛・下痢・嘔吐・けいれんを引き起こす。根は強心剤や利尿剤としても利用される。
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ケシ
ケシ科の越年草。新石器時代から栽培されてきた。未熟果から採取した乳液を乾燥させたものがアヘンであり、日本では栽培が禁止されている。毒性成分のモルヒネは中枢神経を麻痺させ、陶酔感を生じさせるとともに、禁断症状をともなう身体的依存性がある。モルヒネは鎮痛剤に利用されるが、またこれから中毒性の強いヘロインも精製される。
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コカ
コカノキ科の小低木。南米原産で、東南アジアでも栽培される。葉に含まれるコカインは強毒性のアルカロイドで日本では麻薬に指定されている。興奮・麻痺・錯乱などの精神障害を引き起こし、体重の減少や疲労などの肉体的な障害も起こる。依存性もあり、使用を断たれると幻覚・妄想を生じさせる。以前は局所麻酔薬としても使われていた。
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