実母の真実
翌朝、私は以前オルガから聞いたある話題について、尋ねてみることにした。それは、長年縁が途絶えていた彼女の継母の子ども、つまりオルガの「異母きょうだい」の1人から、数年前にFacebookで連絡があったという話だ。その後、どうしたのかが、気になっていた。
「ずいぶんと前の話だけど、実は、その子から会いたいという電話がかかってきたの。偶然、彼女の家は、私が住んでいたところからすぐ近くだったので、思い切って会いにいくことにした」
そうして異母きょうだいを訪ねたオルガは、なんと生後まもなく別れた「実母」と会うことになった。実母もまた、オルガの住まいの目と鼻の先に暮らしており、異母きょうだいが実母の家へオルガを連れていったのだ。
予期せぬ形で実母と対峙することになったオルガは、その第一印象をこう表現した。
「“お入り。そこに座って”。そう言った口調が、とても冷ややかだった」
そして娘は母に、どうしても聞かないわけにはいかない質問をする。
「なぜ私を捨てたの?」
母の答えは、オルガにとっては言い訳にすらならないものだった。
「すでに2人子どもがいるのに父さんと別れてしまっていた母は、生まれたばかりの赤ん坊、つまり私を自分には育てきれないと感じて、自分の姉に預けたというの」
継母だと思っていた女性は、オルガの伯母だった。そして、その伯母は、自分がきちんと面倒を見ると約束しておきながら、姪であるオルガを虐待した。
「それらすべてを、私は母自身の口から聞いた」
オルガは厳しい表情でそう言うと、吐き捨てるようにこう続けた。
「私は母に、こう言ってやった。そんな形で娘を捨てるなんて、犬以下よ」
その日から、彼女は、実母や伯母らとのつながりを断ち切った。
告白
実母との対面を語ったオルガは、涙目になりながら、つぶやいた。
「もし捨てられてなかったら、私の人生はもっと違っていたかもしれない……」
どう違っていたと思うのか、私は声に出して尋ねることができなかった。少なくとも、路上生活を送ることはなかったのではないか、そして薬物問題に悩むこともなかったのでは、と、考えたのかもしれない。彼女は、今でも薬物依存の後遺症に悩んでいるからだ。以前から、再び薬物に手を出すことを避けるために、タバコを吸うことだけはやめられない、と口にしていた。そしてこの時は、聞かれもしないのに、自分からこんな告白をした。
「リツコ、正直言うと、私、神経が昂ったり、不安になったり、精神的に悪い兆しが見えたら、少量のマリファナを吸っているの。それがないと自分が爆発しそうで怖いから」
どこか後ろめたそうに言ったかと思うと、オルガは、自分がいまだに精神的に不安定な状態を脱することができていない、と訴えた。実際に、マリファナで自分を落ち着かせるのが間に合わなかった時は、何かわけのわからないことをわめき出すのだと言う。そんな時、子どもたちは、とにかく関わらない、話しかけないようにしているようだ。
メキシコでは医療用マリファナの使用は合法で、嗜好品としての使用も、犯罪ではない。それでもオルガが私に言いづらい様子を見せたのは、できることなら、あらゆる薬物から離れて暮らせていると、報告したかったからだろう。
私は、精神の安定のためのマリファナ使用はよくある話で、理解できると伝えた。そして、メキシコシティのストリートチルドレン支援NGOで活動する友人の中に、症状に合わせてマリファナを安全かつ有効に使う方法に詳しい人がいるので、いい情報があったら教える、と約束した。そうして後から送った情報は、専門的すぎてあまり役に立たなかったようだが、少なくとも、私が彼女のやっていることは間違っていないと考えていることが伝わるよう、願った。

自宅の前庭にロッキングチェアを出して、くつろぐオルガ 撮影:工藤律子