7月上旬、涼しいはずの札幌は、酷暑だった。
こんなのは久しぶりだ、と地元の人たちも驚いていた。
札幌時計台でライブを組んでもらった。しかし、会場は、冷房がなかった。
リハーサルの段階で汗が吹き出した。ペットボトルの水を4本飲んだ。信じられないくらいの量の汗をかいた。しかし本番は無事に遂行できた。『ワイチャイ』という4年ぶりに出したアルバムのツアーのファイナルだった。約1年にわたり、ツアーをした。その最後に北の大地の時計台、というのは味があった。ストリップ劇場、教会、能楽堂、様々な舞台をセッティングしてもらったツアー。いま新しいアルバムを作っているが、次のアルバムはどんなツアーになるのだろう。また行ったことのない場所、地域に行けたらうれしい。
時計台ライブの翌日は何も予定を入れていなかった。
電車に乗ってどこか行こうか、近くでお茶でも飲もうか。まったく何も決めていなかった。ただ延泊することだけは決めていた。夜の飛行機の時間まで時間がある、とかではなく、この日は丸々1日空いていた。さてどうしよう。とりあえず札幌駅に行こう。地下鉄で札幌駅に出た。
主要駅に行けば何かあるだろう。駅に着いて路線図を眺めた。どこも遠い。小樽は行ったことがある。違う場所へ。岩見沢。どこかで見た地名だ。ここに行こう。いや、苫小牧。苫小牧、名前がいい。岩見沢まで行って、そこから苫小牧へ行く線がある。うまくいくかわからないが、やってみよう。
電車に乗って岩見沢を目指した。江別という駅で降りて、乗り換え、岩見沢。降りる。
駅の広告に自分と同じ名前を見つけて嬉しくなる。前野商店。何か始まる予感だ。
駅から出ると駅前横丁。
この街でのんびり過ごして、夕方からここで飲む、という1日も良さそうだ。
ただ、せっかちな自分はのんびり待っていられないので、すたすた歩く。茶店に行きたい。起きてからコーヒーを飲んでいない。朝はコーヒーを飲まないと始まった感じがしない。あった。道の向こうに茶店があるではないか。