やることはこのくらいか。ライブの翌日。
自転車まで戻り、また走らせた。北海道はでかい。
「ぷらっとみなと市場」という市場があったのでそこで海鮮丼をいただき、併設されたほっき貝資料館へ行こうと思ったが、すでに閉まっていた。貝が好きなので残念であった。苫小牧はほっき貝水揚げ日本一とのこと。そういうことを知って、ひとつひとつ重ねて、歳を取ってゆく。
駅へ戻ってさてどうしよう。この街の夜を過ごすか、宿のある札幌へ戻るか。路線図を眺めると、社台、という文字が目に入った。社台、あの競馬の社台ファームの社台か? 北海道で社台、間違いないだろう。この駅に行けば、近代競馬の何かメモリアルなものがあるんじゃないだろうか。苫小牧から電車に乗り、社台駅を目指した。4つか5つくらいだった。
車内は下校の学生が多かった。夕日に照らされていた。車窓から北海道が見えた。
さあ社台だ。降りる。
何もない。小さな無人の駅舎がひとつ、あるだけ。馬の像もない。競馬のことはなにも書かれていない。いまの競馬の中心にいるような、日本の競馬界を牽引しているような存在だと思っていたが、そのふるさとの駅には何もなかった。車を走らせれば当然社台ファームはあるのだろうけど、列車というのは、うすーい存在になっているのかもしれない。北海道では。
駅を出て、街ぶらしようにも、スケールがデカすぎる。少し歩いて道路があったが、これが高速道路並みの大きさで、走ってる車も高速並みの速さだった。
途方に暮れ、それでも歩いたが、やはりブラブラはできなかった。
駅まで戻り、裏側をもう少し歩いたが、観念した。
駅の中に入り、階段を上り反対のホームへ渡っていると、遠くに馬が見えた気がした。ようく目を凝らすと、2頭の馬と、1頭の仔馬がいた。会えた、と思った。ああ、自分は馬に会いたかったのか。馬は広い大地が似合う。
ホームを見下ろすとキツネが走った。ふさふさの尻尾。あんなにふさふさなもの、はじめて見た。
列車がホームに入ってきた。