準備を整え、ギターを背負い、スーツケースを転がし、ライブ会場へ向かう。路面電車に乗ると、わりとすぐ目的の駅に着いた。しかし会場は見当たらない。電話で店主に問い合わせると、どうやらひとつ先の駅に着いてしまったらしく、丁寧に道順を説明してくれた。無事会場のヲルガン座に着き店主に建物内を案内してもらう。古くてカッコいいビルだ。ここを店主は買ったらしい。売りに出され、ビルが壊され、新しいビルになってしまうくらいなら、このままのビルを残したい、と。建物は4階まであった。安くはないだろう。値段は聞かなかったが、屋上から見た路面電車のある街の風景は、心地よかった。
ライブには全国からお客さんが集まってくれた。会場であるヲルガン座に行ってみたかった、という方もいただろう。新しいアルバム『営業中』から初めてライブで歌う曲もあった。レコーディングでこねくり回していた曲たちが、野に放たれる。羽を持って、飛び始める。録音の時に込める熱と、ライブで歌う時に込める熱は、少し違う。いや、熱は同じだけど、通す管の太さが違うのか。ライブはドバッと一瞬の熱波。録音はじわあっと炙っていく感じか。無事ライブも終わり、新作も沢山の方が買ってくれた。終わって店主と、ライブ制作の間に入ってくれたNさんと軽くビールを飲み、店を後にした。宿に戻って荷物を置き、ラーメンでも食べに行こうと外へ出た。深夜1時を回っていたか。宿の自転車を借りて繁華街へ。街はびっくりするくらい賑やかだった。知らない街をママチャリで走る心地よさ。中華料理屋でラーメンを食べ、自転車を漕ぎ、宿に戻った。ようやくアルバムのツアーが始まった。
翌日は松山道後にあるストリップ劇場でのイベントだった。ヲルガン座の店主が企画したイベントだったので、松山まで同行させてもらうことにした。朝、フェリー乗り場から船で松山港へ。港で待ってくれていた音響さんの車で会場のニュー道後ミュージックへ。久しぶりだ。
2年前、縁をいただき、ライブをさせてもらったことがあった。四国最後のストリップ劇場。その時、社長から色々と話を聞いた。その時の話が強く残っていたので、再会に緊張した。相変わらず顔に人生が滲み出ている。器の大きさ。楽屋は踊り子さんでいっぱいだったので、部屋を別に取ってくれていた。そこで着替えたりゆっくり休んで、と。
お礼を言い、さっそくリハの準備へ。綺麗な劇場内。しかし時間があまりない。急いで弦を張り替えて、サウンドチェック。音響さんうまい。良い感じ。そしていよいよ踊り子さんたちとご対面。自分の弾き語りで踊ってくれる5人の踊り子さんたちがステージの盆のところに集まった。
つづく