夢の時間はあっという間に終わり、最後は皆で合ポラタイム。演者が全員集まり、お客さんが写真を撮る。合同ポラロイド撮影会。すべて終わり、裏で皆さんに挨拶。ここから踊り子さんは夜の部の通常の演目があるため、楽屋へ戻り、次の準備をする。自分は外へ出て物販をした。新しく出来たばかりのCD『営業中』を売る。沢山の人が買ってくれて助かった。
それから着替えて外の椅子で社長と軽く乾杯。社長の話を聞く。ストリップ劇場は全盛期は全国に300館以上あったが、今は10数館。中四国はここニュー道後のみ。社長は独自の興行をしなければあとがない、と言っていた。「怪談ストリップ」というものを新しく生み出し、何年も前から続けているという。
沢山のお金も使った。だけどそれ以上のものをストリップからもらった、とも言っていた。温泉街にあるストリップ劇場の灯を消したらいけんと思う。その言葉が特に響いた。温泉街は人の心がリラックスしていて、ふらっと入りやすい。ストリップ入門、ストリップの入り口としても、初心者にとっても良い。温泉街のストリップ劇場がなくなったら、東京の劇場もなくなると思う。社長は真剣な眼差しでそう言った。俺はここにかけてる。その言葉にしびれた。
『営業中』というアルバムを出したが、いきなりそのテーマの総本山にぶちあたった感じがした。自分はふらふら旅を続けて、たまに店に入って、窓の外を眺めて、歌なんか呑気に書いているが、その窓がなければ、歌だって出来ない。呑気でいられない。店がなかったらライブができない。いや、店がなかったら、街なのだろうか。そもそも、街と呼べるのだろうか。
荷物を片付け、踊り子さんのステージが終わると、もう周りの店はやっていなかった。コンビニで缶ビールを買い、数人で軽く乾杯。真夏の広島、道後、と濃厚な2日間が終わった。
翌日も好天、猛暑日。喫茶店に入り、旅行者を眺めた。皆ゆとりのある表情をしていた。道後温泉に入り、ぷらぷらしていると、昨日の踊り子さんの1人にばったり遭遇。声をかけてくれた。昼食を食べに行くという。またどこかで、と挨拶すると、軽やかなステップで路地へと入って行った。後ろ姿をしばらく見つめた。