
花束
次の日も宿を取っていたので、その日はゆっくり網走を回ることにした。しかし二日酔いでだいぶ酒が残っている。何も調べないで来たので、とりあえず駅へ向かった。
観光案内所のようなものが、駅にあった。小さな、案内所だった。そこにレンタサイクルが1台あった。借りたかったが、ブレーキの調子が悪く貸し出せないとのこと。見た目はなんともなさそうなので、ちょっと乗ってみていいですか、と試運転させてもらう。まったく問題ないので、貸してもらうことに。係の人におすすめの場所を聞くと、地図を出して、能取岬という場所に、ペンで丸をつけてくれた。蛍光ペンでルートをなぞってくれて、自転車で30分くらいで行けますよ、と教えてもらう。少し行ったところにコンビニがあり、そこから先は岬まで店がないので、何か買うならそこで、と言われ、少し気が引き締まる。ヘルメットを装着し、いざ出発。
自転車を漕ぎ始めてすぐに、海が見えた。これがオホーツク海か。無断で漁をしないでください、という看板があり、その海は、美しかった。命が満ちていた。もうここがゴールでも良いと思ったが、先へ進む。

「密漁禁止」の看板
しばらく走るとゆるやかな上り坂になり、緑が溢れ始めた。走ってる自転車がいないが、大丈夫だろうか。車がスピードを上げて追い越してゆく。さらに上り坂になっていく。だんだん後悔の念が押し寄せてくる。前にも思ったが、北海道はレンタカーがないとどうにもならないのだ。それを心に刻んだはずだが、またやってしまったのか。ペダルが重い。さらに、この時は熊出没のニュースがよく出ていた。いかにもいそうな雰囲気で、でも上り坂なので速く走ることもできない。何をしに来たのだろう。

ママチャリで走る道なのだろうか
こういう道をひたすらに走った。どのくらい走ったのだろう。決して30分で着くような道のりではなかった気がするが、30分で着いたのかもしれない。道が開け、下り坂になった。そこを両足を広げ、一気に駆け降りた。46歳。でもその時は、歳なんて気にしてない。不思議なものだ。25歳でも、37歳でも、46歳でも、あまり気持ちは変わらない。なぜだろう。見た目だけどんどん変わっていく。
坂を下り終わると、一気に視界が開け、オホーツク海が広がった。灯台があった。ぱらぱらと観光客もいた。同じような自転車が2台置いてあり、弱音を吐いていた自分を恥じた。
ベンチに腰掛け、網走駅で買った帆立弁当を食べた。何も起こらなかった。海を眺めた。弁当を食べ続けた。鳥が飛んでいた。食べ終わるとすることがなくなって、また海を眺めた。