プロゲーマーの役得とでも言うべきか、〈チョコブランカ〉こと百地裕子がゲームを楽しんでいると常に人が集まる。その中にはメディアでもおなじみの芸能人や知識人、スポーツ選手などもいて、彼女の周囲ではゲームをコミュニケーションツールとしてさまざまな交友関係が広がっているという。今回はそうした交遊録のうちでも、とくに彼女が憧れを抱いている人々との触れ合いの様子をのぞいてみた。
本物のカーレーサーとレースゲーム!
ゲームは時として、ただ単に「楽しい」「面白い」以上のことを与えてくれます。私の場合は、ゲームのストーリーから人生を学び、ゲームセンターでの交流から人付き合いを学び、そして大会やイベントで多くのチャンスや人脈と巡り合えました。ゲームをやっていなかったら絶対に知り合うことはなかっただろうという有名人もたくさんいます。
まずは世界的にも有名な元レーシングドライバーの土屋圭市さん。私は格闘ゲームにハマる前は車にハマっていたという話をよくするように、中高生の頃は専ら車雑誌を愛読していました。いつも買っていた雑誌では、よく「ドリキン(ドリフトキングの略)土屋圭市の○○」といった企画が組まれており、それを車大好きキッズだった私はいつもワクワクしながら読んでいました。
いつかは私もカッコいいスポーツカーに乗りたい! と思いながら土屋さん監修のレースゲームを見つけて買ってきて、それで遊んで実際に運転してみたいという欲を静めていました。土屋さんが解説しているレース大会の動画もたくさん見て、その面白い話しぶりにたっぷり笑いました。
実力者であるうえに場を盛り上げることも上手で、走りでもトークでも観客を楽しませてくれる。「まさにレジェンド!」と憧れていたわけですが、それから十数年後、ゲームがきっかけで土屋さんの企画に呼んで頂けることになりました。そう、あの土屋圭市さんと一緒にレーシングゲームをする日がやってきたんです。なんということでしょう!
弟とスーパーファミコンのソフト「首都高バトル2 ドリフトキング 土屋圭市&坂東正明」(元気)で遊んでいた頃の自分に、「将来、土屋圭市さんと一緒にレースゲームをすることになるよ!」って言っても絶対信じないだろうなぁと思いながら、家にあったそのゲームの箱にサインしてもらいました。私が差し出したのがあまりに懐かしいゲームだったので、土屋さんは「さっき秋葉原で買ってきたんだろ!」と笑いながら驚いていらっしゃいましたが、それをきっかけにとても仲良くして下さっています。
仕事でご一緒させて頂ける機会が増え、次第に自分が昔見ていた土屋さんの動画のノリでイジってもらったり、イベントで私があたふたしていたら助け船を出して、凍りかけた会場を笑いに包んで下さったこともありました。
また、現役で活躍中の人気レーシングドライバーである平手晃平選手ともゲームがきっかけで仲良くさせて頂いています。根っからのゲーム好きで、夜寝る前には「ストリートファイター」(カプコン)のプロゲーマーたちの対戦動画をチェックしている! というほどの格闘ゲーマーと聞いて平手選手を招いての対戦会を実施しました。
レーサーがレースゲームをやると、実際のレースで走ってらっしゃるコースだとすぐ上手に走れます。ただ、実際に運転していると感じられる重力やタイヤの感覚といった情報がゲームにはないので、そこは難しそうにしていらっしゃいますが慣れるとすぐ速くなります。流石です。
今では若手レーシングドライバーの皆さんも引き連れて遊びに来て下さるので、お互いの業界について情報交換をさせてもらったりしています。そのうちにレースゲーマーたちを誘って、リアルレーサーVSレースゲーマーで対戦してみよう! なんて話もしていてとても楽しみだったりします。
私は平手選手たちが実際にバトルを繰り広げる国内最高峰の自動車レース「SUPER GT」を観戦しに行き、ゲームではそのリアルレーサーの皆さんと対戦する。両方の文化を体験し、理解することが私自身の成長につながっているように感じます。とてもありがたい機会を頂けているなぁと思う次第です。
人気イラストレーターとは人狼ゲーム
テレビゲームではないのですが、「人狼ゲーム」という数名で集まって言葉を用いて騙し合いをするテーブルゲームがあります。実はこのゲームが、イラストレーターで詩人の326(ナカムラミツル)さんとの縁をつないでくれました。
326さんの本やイラストは、私が高校生の頃に大流行していたんですよね。思春期の若者のデリケートなメンタルを刺激する詩と、独特な世界観だったりほっこりさせられたりする絵は当時の私の心にも刺さり、悶々としていたあの時期はいつもそばに置いて眺めていました。『やさしいあくま』(幻冬舎、2000年)という絵本も好きで大事にしていました。今でも326さんとお話しすると、とにかく心をスッキリさせてくれるというか……分かりやすい表現でグッと心に響く言葉をもらえます。
私はそんな326さんと「人狼ゲーム」で遊ばせて頂きました。人狼ゲームは、巷(ちまた)に「人狼カフェ」というプレーヤー向けの専門スペースができているほど人気のゲームです。簡単に説明すると、通常4~8人のプレーヤーが人間役と人狼(人間に化けた狼)役に分かれ、メンバー同士で対話を行って巧みに誘導することで、隠れている人狼をあぶり出していく心理戦ゲームです。全ての人狼を当てることができれば人間チームの勝ち、当てられなければ人狼チームの勝ちとなります。
まぁ私は嘘をついたり、他人の発言を覚えて推理したり――みたいな分野が不得意中の不得意なのでいつも惨敗するのですが、皆の駆け引きを傍観するのはとても楽しいです。人狼ゲームをやったことのない人は、ぜひ一度やってみて欲しいです。面白いですよ。
格ゲーに熱くなるファッションモデル
そして最後にご紹介する人は、やっぱりこの人。ファッションモデルでタレントの佐藤かよちゃんです。
彼女と知り合ったのは、まだ名古屋に住んでいた頃でした。愛知県内でアーケードゲーム版の「ストリートファイターⅣ」をプレーする女性はほとんどおらず、男性社会のゲームセンターで黙々と対戦していた頃、「かよちゃんっていうモデルの子が、格闘ゲームやってるよ! 強いよ!」という情報を教えてもらいました。
どんな人なんだろう。格闘ゲームが強いモデルさんだなんて、どんなカッコいい人なんだろう。そう思いながら会える日を楽しみにしていました。
それから1カ月後ぐらいに、名古屋駅近くのゲームセンターで遭遇しました。第一印象は「なんて綺麗な人だ!」で、想像していた通りのカッコいい女性でした。何度かゲームセンターで遭遇していたら自然と仲良くなり、彼女とチームを組んでゲーム大会に出たりもしました。兵庫県まで一緒に遠征して、結構いいところまで勝ち進んだ思い出があります。
そして今でもかよちゃんとはとても仲良しです。私の仕事が忙しくなるにつれ、なかなか一緒にゲームできる機会は少なくなってしまったけれど、彼女とゲームをするとやっぱり楽しいし、対戦ゲームでお互いムキになれるというのがまた最高です。かよちゃんのゲーム好きは、とことん好きな方の“好き”なので、勝てないと本気でむっすりしちゃうところなんかが私は気に入っています。
そんな無邪気な姿を見せてくれる彼女ですが、すごく尊敬している人でもあります。根がしっかりしているので、私が悩んでいると良い意見を投げ掛けてくれます。勉強になる話も聞かせてくれます。