今年は暖冬で穏やかな天候の日が多いように感じます。琵琶湖の水位も低くなっていますので、全体に雨量も少ないのかもしれません。
30年以上前は、湖北地方は大雪に見舞われ、私がよく訪れる高島市マキノ町では、3月下旬になるまで地面が見えないほど雪が積もりました。雪が多く積もらないと冬でも木々の整理ができて助かるのですが、四季の変化が乏しいのは寂しい気持ちになります。
そんなマキノ町にある「萌木の国」で、今回、大伐採を行いました。大伐採というのは、太くなった幹を根元から一斉に切り倒す作業のことです。萌木の国の雑木林は約2ヘクタールあるので、それをすべて伐採すると平原のようになります。
この大掛かりなイベントは、萌芽(ほうが)したクヌギやコナラなどの幹が太ももくらいに成長したのを見計らって、十数年ごとに行います。伐採の目的は、切り出した木をシイタケのほだ木や薪に使うためです。萌木の国を管理してから30年以上になりますが、私はこの大伐採をこれまでにも二度経験しています。
この界隈では雑木林を1〜2ヘクタール単位の広さで伐採するので、空から見るとまるで雑木林の四角いブロックが並んでいるかのようです。
とにかく規模が大きいので私個人では難しく、プロの手を借りることになります。シイタケや薪を生業にしている人に地上の木の部分を買ってもらい、運んでいただくやり方をしています。
伐採の翌春は地面に光が降り注ぎ、いろいろな草が生えてきます。雑木林の中ではこれまであまり見かけなかったススキやスゲの仲間は、暗い林床が明るくなるのを待って生えてくる植物たちです。一方で、ぱったりと姿を消してしまう植物もあります。カタクリやオウレンなど、早春に花を咲かせるスプリング・エフェメラルたちは、平原が再び森のようになるのを待つのです。
今年の春は、草の背丈が高くなるのを覚悟せねばなりません。そして、初夏と秋に草刈りをする必要があり、また仲間たちと作業の計画を立てねばなりません。
草に覆われた明るい雑木林では、生き物の顔ぶれも変わります。野ウサギが多くなり、シカも頻繁に現れます。昆虫では、バッタやキリギリスの仲間が大変多くなります。広々とした空間を、オニヤンマがパトロールのコースとして使ったりもします。
雑木林は木々の成長によって、違う生き物たちと出合う楽しみがあります。この変化が雑木林の一番の魅力だと思っています。
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「萌木の国」
琵琶湖の北部、滋賀県高島市マキノ町にある、今森さんが30数年前から管理している雑木林。