アダルトコンテンツでは「相手」との関係性を築けない
主に男性からよく聞く「アダルトコンテンツを見れば性のことはわかる」という意見に対して、ふたりはどう考えているのだろうか。
みさとさん「そういう人たちが想像する『性教育』は、男性がどうやって射精するかという話だけなんですよね。そこには、セックスはコミュニケーションのひとつという視点がまったく欠けてしまっています。相手側にもやりたいことや嫌なことがあるということを、アダルトコンテンツでどうやって教えられるのでしょうか。セックスには相手もいるのだから、自分だけが愉しめばいいというのではなく、自分も相手も同じ立場で一緒に作り上げるものだという感覚を持ってほしいと思います」
「アダルトコンテンツ=性の教科書」と思ってしまう原因のひとつには、男性側が性教育を受ける機会がなく、アダルトコンテンツしか見てこなかったことも関係しているのでは」と、みさとさんは指摘する。
みさとさん「おそらく、悪気なくそう思い込んでいるのかもしれません。『でも、実際のセックスはAVとは違うんじゃない?』と問いかけてみると、意外と『あ、そうか』と気づく男性もいるんですよね。やっぱり『それは違うよね』と話していくことが大事だと思いますし、女性の側も性に関して自分の意見をもっと言っていい。『性について話すなんてはしたない』という文化で育っているとなかなか難しいかもしれませんが、こちらから働きかけた方がお互い楽になることも多いと感じます」
たかおさん「特に、嫌なことを『嫌だ』と伝えるのは大切ですよね。嫌よ嫌よも好きのうち、という描写は、アダルトコンテンツに限らず、少年マンガなどでもありがちなパターンです。そういうものばかりに触れていると、相手が嫌がっていても『実は嬉しいんじゃないか』『OKのしるしなんだろう』と勘違いしてしまう可能性は十分ありますから」
みさとさん「『彼氏がAVを真似したがって困る』というケースも聞きます。そういうときには、『嫌なことは嫌だと言っていい』とアドバイスしたいですね。『俺のことが好きじゃないのか』と言われるかもしれないけれど、好きという気持ちと『その行為はしてほしくない』ということは分けようということは、いつも子どもたちにも話しています。でも、嫌なことは嫌だと言えるようになるためには、子どものときから『嫌だ』という気持ちを尊重されるということが必要なんですよね。大人は、普段から子どもの意思表示を『わがまま』などと決めつけないようにすることも大切だと思います」
「フィクション」の影響力
「アダルトコンテンツはフィクションであり、そのことがわかっていれば見てもいいのではないか」という意見もよく聞く。
たかおさん「アダルトコンテンツの存在を今のまま守りたい人たちは、『現実とフィクションは別。フィクションだから何が描かれていてもいい』と言うのですが、フィクションが本当に現実に影響しないのかというと、そんなことはありません。たとえば、僕が中学生ぐらいのとき、バスケをやりはじめた友達が周りにたくさんいましたが、それはマンガ『スラムダンク』の影響なんですね。そんなふうに、フィクションによって『同じことを自分もやってみたい』という衝動が引き起こされるケースがあるということは知っているはずなのに、アダルトコンテンツの話になると突然『これはフィクションだから現実には同じことはしない』と言いだすのは、不思議だなと思います。性犯罪加害者の臨床や研究を行っている精神保健福祉士・社会福祉士の斉藤章佳さんによると、アダルトコンテンツを見るという行為は性暴力の引き金のひとつになるほか、フィクションだとわかっていても繰り返し見ることで、現実にやっていいことだと認知が歪んでしまうそうです」
ペアレンタルコントロール
未成年に悪影響を及ぼす恐れがある性的・暴力的表現などを含むコンテンツにアクセスできないよう、子どもの情報通信機器の利用を保護者が監視・制限する取り組み。
セーフサーチ
検索エンジンでポルノや暴力などの不適切なコンテンツを非表示にする自動フィルタリング機能のこと。