10代の女の子たちと沖縄へ合宿に
先月、Colabo(コラボ)のシェアハウスで暮らす10代の女の子たちと、沖縄県へ合宿に行った。Colaboでは年に数回、さまざまな合宿を開催している。Colaboとつながる多くの少女たちが経験せずにきた修学旅行や家族旅行のようでもある。
2年ぶりに開催した沖縄合宿では、初日にひめゆり平和祈念資料館に行き、彼女たちと同世代の生徒たちが、どのようにして戦地に行くことになり、どのような経験をしたのかを学んだ。2日目は、米軍基地の新設問題を抱える辺野古へ。行きの車の中で、案内してくださったノンフィクションライターの渡瀬夏彦さんに、辺野古基地新設の問題について話を聞いた。
政府が、住宅街にあり世界一危険だと言われる普天間基地を移設するためとして、辺野古に新たな基地を作ろうとしていること。しかし、辺野古でなくてはならない理由が明確でないこと。地元住民や、沖縄県民はこれに反対し、選挙でも民意を何度も示していること。反対している人たちの想いや、基地ができることで、その地にどんな影響があるか。基地建設の過程で、さまざまなルール違反を国がしていること。
基地建設のための工事を少しでも遅らせ、止めるために抗議を続けている人々のことなどについて聞いた女の子たちは、「基地って沖縄に作らないといけないの?」「自分の家の近くに基地があったら嫌だ。安心して生活できないじゃん」「そもそも基地って必要なの?」「工事をしている人たちは沖縄の人たちなの?」などの質問をし、沖縄にどうして米軍基地が集中しているのか、その歴史と沖縄への差別、本土に暮らす私たちの責任についてや、沖縄の人々を分断する政府のやり方にも目を向けていた。
辺野古で抗議行動をする人々と合流
辺野古のキャンプシュワブゲート前に到着すると、抗議行動をする人々が集まっていた。人々の後ろには、閉じられたゲートがあり、その中に民間の警備会社の警備員がずらっと並んでいた。そして、ゲートの外にはたくさんの機動隊員がいた。私は2015年から5回目の訪問だが、女の子たちにとっては初めての体験なので、驚いたり、怖がったりするのではないかと思った。
1分1秒でも工事を遅らせたい、この基地建設を必ず止めると抗議を続ける地元の方々の座り込みの様子を見ながら、「参加したい人がいたら一緒に行ってみる? 行きたい人?」と聞くと3人の女の子が「行く!」と言って、機動隊の横を通って地元の方々に合流した。
皆さん、若者たちの参加を歓迎してくれた。この日の抗議行動の司会は、長年沖縄で性暴力被害者女性と共に闘ってこられ、Colaboの活動もよく知ってくださっている高里鈴代さんだった。彼女の司会で地元の方々と腕を組み、「座り込めここへ」「沖縄 今こそ立ち上がろう」「沖縄を返せ」などを歌った。
歌が始まると、機動隊員が続々と私たちの目の前に集まってくる。周りは見えなくなり、見えるのは機動隊員だけ。そんな状況の中、私の隣で抗議に参加した女の子は、初めて聴く歌にもかかわらず大きな声で堂々と歌っていた。
地元の方が「体を触られたくない人は、無理をしないで、排除が始まったらすぐに立ち上がって移動するように」と言ってくれた。これから何が起こるのだろうかと全員が身構える。その後、すぐに機動隊による強制排除が始まった。初めにColaboのメンバーが「ごぼう抜き」(ごぼうを抜くように次々と排除する、機動隊による強制排除のこと)された。
こんなことが日本で起きているなんて……
ただ座り込んでいる一人の市民を何人もの機動隊員が囲み、無理やりその場から連れ出していく。女性の隊員はおらず、「若い女性を触らないで!」と抗議の声がたくさん上がったが、男性の隊員たちは「自分で立ってください。立てないなら連れていきます」「自分の足で歩けないんですか?」などと言って四方から手を伸ばし、女の子たちも私も椅子ごと引きずられ、肩をつかまれたり、背中を押されたりして排除された。
正直、怖かった。女の子たちは、もっと怖かっただろう。そう思い、女の子たちに「無理しないで」と声を掛けたが、みんなその場を動こうとしなかった。
県民の民意を無視した違法工事に反対し、抗議の意思で座っている市民がたくさんの機動隊員に囲まれ、排除されること。税金がそのような用途に使われていること。市民を守るはずの警察が米軍や基地建設を守っていることに、女の子たちは怒りと恐怖を感じていた。それぞれが驚きとショックを受け、恐怖を感じながらも「こんなことが日本で起きていることを記録し、たくさんの人に知らせたい」と、動画や写真を一生懸命撮って抵抗していた。
彼女たちは最後まで気丈に振る舞っていたが、目に涙を溜めていた子もいたし、機動隊に排除される時は体も表情もこわばって、自分の身を守るように両手を体の前でクロスさせておびえた様子だった。
道路の向かい側で、座り込みには参加せず、一連の様子を心配そうに見ていた2人の女の子たちは、「機動隊に囲まれていた夢乃さんたちのことは全く見えなくなってしまい、何が起きているのかは分からなかった。外から見てるだけでも怖かった」という。後から、座り込みに参加した子の撮影した動画や写真などで、どのように強制排除が行われたのかを知って驚きながら、「次は私も座り込みに参加する」「次は体に重りを付けていこう」とか「体重の重そうな人を連れていこう」と話していた。
機動隊員も「心ない人」ではなかった
排除された後も、機動隊員が「ここには立たないでください」「あっちに行ってください」と言うのに対し、一人の女の子は「なぜですか? 危なくないですよ」などと言い抵抗していた。
「あなたたちが移動しないと、私たちが車にひかれてしまう」と言う機動隊員に「それならあなたが別の場所に移動すればいいじゃないですか」とその子が言い返したりしていると、「どうしてもここがいいの? 今日は特別」と言って機動隊員が諦める場面もあった。それは、私たちを「今日だけ」の人だと思ったからかもしれない。