また別の女の子は、強制排除された後、機動隊員に話し掛けていた。「沖縄の人なのか?」「この仕事をどういう気持ちでしているのか?」「海が埋め立てられることについてどう思うか?」「沖縄の海は好きか?」などと質問し、機動隊員も「心ない人」ではないことが分かって、複雑な気持ちになったという。
女の子たちは、沖縄の人々を分断する国のやり方にも憤りを覚えていた。
道路の反対側で様子を見ていた女の子に、「今朝は15分工事を遅らせることができた」と地元の方が教えてくれた。「若い女性には機動隊員も乱暴にしたり、気安く触ったりできないため、工事を遅らせることができる」と聞いて、その子は「修学旅行でみんな来たらいいのに」と言っていた。
確かに機動隊員は若い女性である私たちには手荒なことはしなかったが、私たちの周りで抗議を続ける地元の方々に対しては、容赦なく身体ごと持ち上げて排除するなど扱いが違った。
沖縄の貴重なサンゴや魚たちに感動
女の子たちは、「こういうことが起きているなんて知らなかったし、学校でも教えてくれなかった」「テレビとかでももっと報道したらいいのに」「安倍さんに見せたら? 官邸前に行って映像を見せられないの?」などと言っていた。
安倍晋三首相はもちろんこういう現状を知っており、それでも基地新設を推し進めようとしていることを知ると、とても驚いて、「安倍さんも知っててやっているなら、誰に言ったらいいの?」「10年以上前から住民の人が反対しているのに、変わらないの?」「東京には反対する議員はいないの?」などと言い、選挙の大切さを感じたり、どのように投票する人を選べばいいのか、沖縄の外に住む人々にどう伝えるかなどを自分事として考えたりしていた。
辺野古ゲート前での抗議の後、グラスボートで大浦湾の貴重なサンゴを見せていただいた。初めて見る大きなサンゴや魚に、女の子たちは「こんなきれいな海を埋め立てようなんて、信じられない」と口々に話していた。土砂が入れられている工事現場の近くまで船で近付くと、民間の監視船が「これ以上近寄るな」と警告を出してきて、離れるまで私たちの動きを監視していた。
その後、土砂を採掘している場所や、土砂の運び出しをしている琉球セメント桟橋前での抗議、カヌーチームの抗議の様子なども見学した。途中、休憩先でシークワーサージュースやパインかき氷、沖縄そばを食べ、抗議の後には美ら海水族館にも行って沖縄を満喫した。美ら海水族館にも、大浦湾のグラスボートで見たサンゴや魚がいて、女の子たちは辺野古の海にもたくさんの生き物たちが暮らしていることに思いを馳せていた。
みんなクタクタになり、夕食時にはご飯を食べながら寝てしまう子もいるほどだったが、宿に帰ってからも、「どうしたら起きていることをみんなに伝えられるだろう?」「友達に話してみる」「ゲート前でキャンプできないのかな」「渋谷のスクランブル交差点で映像を流せないの?」「TikTokで流せないかな」「インスタライブで辺野古の様子を生配信したい」などと「私たちには何ができるんだろう?」と口にして、考えていた。
基地問題を間近に体験した少女たちは
この日のことを発信する際に、伝えたいことはあるかと聞くと、彼女たちはこう話した。
「思ってたよりひどかった。メディアでも全然報道されていないし、『問題ないです』などいいところしか出てこないから現状を知らなかった。もっとみんなが真剣にこの問題を考えないといけないと思った」
「土砂を運ぶ仕事をしている人や警備員、機動隊員の中には、あのような仕事を好きでやっているわけでない人もいるだろうし、2兆円以上のお金を使って無駄なことをしている。そんなお金があるなら基地を作ることではなく、Colaboみたいな支援団体に使うとか、そういう考えで世の中を良くしてほしい。基地を作って良くなると思っているから、ああいうことをするのかもしれないけど、みんなにとっていいことをしてほしい」
「学校の修学旅行で沖縄に行ったけど、今起きてる沖縄の問題は知らなかった。基地問題はなんとなく知っていたけど、こんなひどい状況とは知らなかった。沖縄で戦争の歴史を学ぶことは大事だけど、それ以外にも今の米軍基地の問題も、全国の学校で学習として取り入れて合宿とかしてほしい」
「何がひどいと思った?」という質問には、「何の得もないのに、両方の国の偉い人たちの自己満にしか思えないし、国民が訴えているのに何年も変わってないのがひどいと思った」と話した。私自身も初めて機動隊に排除される経験をし、権力が間違った使われ方をしていることを今まで以上に実感した。
一緒に辺野古に行った女の子たちは、この後、沖縄の海で遊んでいる時も、東京に帰ってきてからも、辺野古で起きていること、沖縄が抱えさせられている問題に対して、自分たちができることを考え続けている。
自分事として捉え、考え、行動できる人に
辺野古訪問の報告を私のFacebookとTwitterに投稿したところ、Twitterには3000件以上のリプライがあり、ほとんどが匿名の攻撃や中傷で、実名登録のFacebookとは全く違う反応だった。女の子たちはその現状にも目を向けていて、「ネットでアンチしてる人たちも自分の目で見てみたらいいのに。そうしたら変わるんじゃない?」と言っている。
自分が見たこと、聞いたこと、体験したことから分からないことを質問し、いろいろな意見や立場、ネットでの攻撃的なカキコミがある中で、自分はどう考えるのかを議論して、自分の頭で考えて、自分の言葉で発信する。一つひとつを、誰から言われたわけでもなく自分たちでやっている。友達に伝えてみたり、SNSで発信してみたりして、友達から「でも、仕方なくない?」「私たちに変えられることじゃないっしょ」と言われたり、関心を持ってもらえなかったりして、その反応を踏まえて、もっとできることはないか、自分事として考えてもらうにはどうしたらいいのかを考え、議論し続けている。私も、一緒にできることを考え、やれることから実践していくつもりだ。
Colaboとつながるのは、虐待や性暴力・性的搾取被害など、さまざまな暴力の被害に遭ってきた少女たちだが、背景には多くの市民の無理解や、誰かの犠牲の上に自分の生活や幸せが成り立つことをよしとする社会/考え方がある。彼女たちが抗議に参加する様子に、沖縄の問題は「私たちの問題だ」と直感的に感じたのではないかと思った。
彼女たちのように、さまざまな社会の問題について、自分事として捉え、痛みを分かち合い、考え、行動できる人が、今の日本社会にどれだけいるだろう。そんな人でありたい、と彼女たちを見ていて私は強く思った。