私、『ONE PIECE』や、『モンハン』(モンスターハンター)にハマりまくったときがあったんです。残念なのは、それらに出会ったタイミングが少し遅くて、私がいちばん辛かった時じゃなかった。もしも、もっと早く出会っていたら、あそこまで「死にたい」という思いにとらわれることはなかったと思う。趣味や好きなことを何でもいいから見つけてほしい。没頭して、何もかも忘れられるもの。考えても考えても終わらないことって、あるから。
仁藤 ところで甜歌さんは、てんちむのペンネームで『中学生失格』(竹書房)という著書を2010年に出されましたよね。この本には当時の思いが日記形式で赤裸々に、隠すところなくつづられていますが、どのような思いで本を出したんですか?
橋本 特に自分から本を出したい、と思ったわけではないんです。企画が持ち上がり、私が書いていた日記をそのまま書籍化しよう、という流れになったんです。私は「絶対嫌です」と言っていたんですよ。だって、やっぱり隠したいですよ。それで出版した当日、私は号泣していたんです。「本なんて出さなきゃよかった」と、今さら遅いのにそう思って。でも世の中に出てみたら、大反響があった。その後でやっと、「私が書いたものが、誰かのためになったのならいいな」と思えたんです。
仁藤 うん、うん。橋本さんが隠さずに自分の体験や思いを伝えてくれることで、救われる女の子たちはとても多いと思う。
橋本 私は今21歳ですが、この先いくつ年齢を重ねても、ずっと子どもの味方でいたいと思うんです。それは間違いなく断言できる。私は子どもの頃から芸能活動をしていたこともあり、多くの大人たちと関わってきました。いい大人も、悪い大人もいた。その中で人を見極める力もついた。それと同時に、いまだに「子どもに理不尽なことを言ったり、強要するような大人は許せない」という気持ちがとても強いんです。年齢的には成人しても、心の中には自分が経験してきた子どもの頃の辛さがずっと残っていて、だからこそ、同じような気持ちでいる若い子たちの味方でありたいんです。
仁藤 それは嬉しい。私も同じ思いです。子どもたちの味方であり続けられる大人は、本当に少ないですから。
橋本 私みたいにギャルになって荒れて、学校も行かなくなって、という女の子は、普通の大人からすれば異質な存在だと思うんですよね。でも私のように派手な髪形や服装でごまかすこともせず、他人から気づかれないところで心を苦しめている女の子たちはすごく多いと思う。
仁藤 ええ。今は、完全に優等生に見えるような子でも、買春被害にあっていたりするんです。少女買春の現場はどんどん見えにくくなっているし、巧妙にもなっています。
橋本 傷ついている若い子にとっては、それがどんな傷でも、生死をさまようくらいのしんどさなんですよね。
仁藤 本当にそう。その深刻さをわかってもらえないところから、子どもたちの孤独感が生まれている。甜歌さんのように、自分の体験を正直に話してくださる人が増えたら、きっと救われる子も増えると思います。本当にありがとうございました。
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