それはもう、セールスの教育がなってないんですよ。販売店サイドの問題ですよ! あくまでもそこの所長がお客様のところにお伺いしたり、判断して、その結果をこちらに報告をもらいますので。その報告がちゃらんぽらんな報告であれば、取引的なことも考えるとは思いますよ! あくまでもお客様と販売店とのやりとりですから。まずはこれを切ってすぐ販売店に連絡を入れて、そのセールスが今日どうしたのかと! 新聞社としてクーリングオフや、謝罪の電話をすることはありえません!」(怒鳴る)
仁藤「その販売店を信頼できない、販売店からの連絡はしないでほしいという話なのですが」
担当者「それはお客様が、勝手に信用できないと言っているだけじゃないですか!」(怒鳴る)
仁藤「勝手に?」
担当者「うん。だからこちらでは、どういう状況かわかりませんので。読者センターというのは意見を聞いて、販売店を聞いて、あくまでも販売店がエリアを責任してますので。読者センターの立場としては、お客様には一切電話をしておりません。これはどなたがこちらに電話をかけても」
仁藤「販売店の所長の指導がなっていないからこういう事態が起きた、とあなたが言っているんですよね?」
担当者「はあ」
仁藤「こちらは勧誘員に、個人的なやり取りまでするようにと言われておびえているんですよ」
担当者「それは勝手に勧誘員がやったことじゃないんですか!?」(怒鳴る)
仁藤「新聞社として、責任をもって対応するということはないんですか?」
担当者「それはありません。私は責任をもてません。あくまでも読者と販売店の責任ということです」
仁藤「責任をもてない販売店に新聞を卸しているということですか?」
担当者「それはお客様が勝手に、責任がもてないといっているだけじゃないですか!」(怒鳴る)
仁藤「あなたはどういうお立場なんですか?」
担当者「読者センターとしてお客様の意見を聞いています」
仁藤「上司はいないんですか?」
担当者「上司はいません!」(大声)
仁藤「あなたが責任者なのですか?」
担当者「違います!」
仁藤「あなたのお名前は?」
担当者「名前もこちらでは名乗っておりません!」
仁藤「あなたは新聞社の社員の方ですか?」
担当者「……それはこちらから言わなければいけないんですか?」
仁藤「私は新聞社の方とお話ししたいんですけど」
担当者「販売店さんと話していただかないと」
仁藤「あなたは誰なんですか?」
担当者「私は読者センターの者です。社員です」
仁藤「販売店から本人のところに連絡がいったら、またおびえてしまいますよね?」
担当者「だったらどうしたらいいんですか!! 販売店から連絡させますからお名前と電話番号を教えてください」
仁藤「あなたのお名前も教えてもらえないのに、こちらにだけ連絡先を聞いて話を終わりにしようとするんですか?」
担当者「……」
仁藤「もしもし?」
担当者「はい? 時間がたつと勧誘員と連絡取れなくなっちゃう可能性もあるんですよ? 今日ですよ! 今、連絡すればクーリングオフという手続きもできますので」
仁藤「クーリングオフをしていただくのはよいのですが、販売店からまた謝罪のために訪問されたりしたら、おびえてしまいますよね」
担当者「じゃあどうすればいいんですか!!」(怒鳴る)「精神的に精神的にっておっしゃってますけど」(あざ笑う)
仁藤「そちらがおびえさせて契約させて……」
担当者「私は脅してませんよ~?」(あざ笑う)「失礼ですね、それはちょっと。私は脅してませんよ?」
仁藤「御社の新聞名を名乗って家にやってきて、そういうやり方で契約を迫られた、という話をしているのですが?」
担当者「それは販売店の責任で!」
仁藤「人が話している時に怒鳴らないでください。話にならないから、上司の方にかわっていただけませんか?」
担当者「ですから、上司はおりません! これで私は電話を切らせていただいて、販売店に連絡を入れますので」
仁藤「連絡はされたら困るんですよ。本人に連絡されたらまたそれで不安に……」
担当者「ガチャン!!」(電話を切られた)
仁藤「……」
こちらとしては、ひと言「そんな不安な思いをさせてしまってすみません」と謝って、「こちらでクーリングオフの手続きを取らせていただきます。販売店からは連絡させませんし、今後、その勧誘員がお客様のお宅へ伺うこともさせません」と、解約の確認をしてもらえればよかったのだけれど……。読者センターの怒鳴り男も、日々たくさんのクレームを扱っていて、精神的に追い詰められているのではないかと心配になった。
しかしネットで調べると、他にもこのセンターで傲慢(ごうまん)かつ威圧的な態度を取られた、という書き込みをいくつか見つけた。もしかしたら、この新聞社のスタンスなのだろうか。
結局、私から販売店に電話をしてクーリングオフの手続きをした。読者センターからも販売店に連絡がいったようで、販売店の所長は恐縮というかおびえたような様子であった。この人もあの勢いで怒鳴られたのだろうかと思うと、心が痛んだ。
もちろん、押し売りは決してあってはならないことだけど、新聞販売店の立場の弱さも感じた。押し売りした勧誘員にもノルマが課されているのかもしれず、生活が困窮していて必死になっていたり、他に仕事を見つけられずにここでなんとか頑張らねばと思っていたのかもしれない。
そして、虐待や性暴力被害を受け生き延びてきた女子が、その弱みにつけ込まれる形で生活保護費からの契約を迫られるというのも、強い者が弱い者から次々に搾取していく構造に思えてやるせない。
これから春にかけて、新生活を始める若者も増える時期。引っ越したばかりの人を狙った、押し売りのような新聞勧誘員が増えないことを願う。
ちなみに私は、知らない人がインターホンをならしてきても、一人の時は居留守を使う。郵便や宅配物は、不在票をもって再配達を依頼するか、センターまで取りに出向けばより安心だ。玄関のドアを開ける場合はチェーンロックをかけている。もし、押し売りにあったり、しつこく何かの契約や連絡先の交換を迫られるようなことがあれば、勇気を出して「帰ってください!」と言い、周囲の人に助けを求めたり、警察を呼ぼう。何かあった時には、助けを求めたり、誰かに相談する勇気をもってほしい。
この生きづらい世の中を、知恵を出し合い支え合って生きる関係性が、押し売り勧誘員や読者センターの方を含む、すべての人たちにある社会になってほしい。そのために、私も自分のできることをしたい。
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