殿垣くるみ(聞き手) いま改憲の議論が盛り上がっていると思いますが、この本(『主権なき平和国家』)では、「主権」「平和」ということを論じるのに、なぜ地位協定を取り上げたのでしょうか。
伊勢崎賢治 日米地位協定は、1960年に締結されましたが、それ以来変わっていません。これは異常なことなのです。それはなぜかというと、そもそも占領統治というのは、永久に(継続すること)はできません。(継続すると併合や侵略を禁じている)国際法に反してしまいます。
だから、アメリカは、「疑似占領統治」をするための仕組みを作ろうとしたのだと思います。つまり、侵略者ではなく、植民地化でもないけれども、永久に日本に軍を置きたい――それを可能にしているのが、日米地位協定なのです。
(日本は)世界で一番戦争をしているアメリカを、(在日米軍基地として)“体内”においているわけです。そのアメリカが戦争をしたら、日本は戦争をしていないといえますか? 国際法上(日本は戦争をしていないと)は認められません。
交戦国から中立であるためには条件があるのです。すなわち、国土も空域も海域も使わせない、通過もさせない、そしてお金も出さない。これらがすべて満たされないと中立とはいえません。われわれは(これらの条件を)どれも満たしていないのです。つまり、アメリカが戦争をしたら、日本も戦争をしていることになるのです。
(したがって、アメリカを“体内”に置いている日本においては)日米地位協定の事を考えずに、
“主権観”をもって戦争もしくは平和を考えることは、全く意味がないのです。