撮影現場は猫のためにも心を一つに
加藤 ドラマ『警視庁・捜査一課長』、前シーズンから見ています。内藤 ありがとうございます。
加藤 先ほど、撮影現場を少し見学させていただきましたが、ビビちゃんは堂々としていましたね。内藤さんにもずいぶん懐いているように見えました。
内藤 ビビ役の猫の本名は「黒豆」といって、僕のマネージャーでもある所属事務所の社長が飼っている猫なんです。子猫の頃からよく知っていて、今6歳です。事務所には、6匹猫がいて、事務員の数より多い(笑)。僕も事務所の猫たちとはみんな顔見知りです。
加藤 そうなんですね。その中で、黒豆ちゃんが選ばれた理由って何かあるんですかね?
内藤 大岩のキャラクターに合ったんでしょうね。極端に言えば、ものすごくかわいらしい女の子っぽいキャラクターの猫だったら、刑事の大岩とは合わないと思うんです。
加藤 あのどっしりしてちょっと無骨な感じがいいんですよね。
内藤 そうですね。大柄ですし、あとは色とか柄とか。何より撮影現場はいろいろと大変ですから、まったく知らない猫よりも僕に懐いていることが大きいかもしれません。
加藤 あのドラマに猫を登場させようというのはどういう経緯だったんですか?
内藤 最初から台本に書いてありましたね。当初、2時間ドラマで始まって連続ドラマとしてシリーズ化されましたが、ビビは初回から登場しています。僕のアイデアではないです。
加藤 猫がいる撮影現場ってどんな感じですか? 見学させていただいて、ビビちゃんのシーンが今日の最後の撮影でしたが、OKが出たときにスタッフさんがドッと沸いたのが印象的でした。通常のドラマ現場とは違う盛り上がりがありそうですね。
内藤 やっぱり和みますね。猫が思いもしない表現をしてくれることは、僕たちにとって何よりもうれしいことなんです。猫は台本に書いてある通りの動きにはなかなかならないですから、それがうまくはまったときの喜びはありますね。それに僕たちの言葉が猫にはわからない分、黒豆に対してみんながものすごく気を遣う。これが大事だと思うんです。猫に負担はないか、危険はないか、ストレスがかかりすぎていないかとか。お互い不幸なことにならないように、みんなが心を一つにして取り組んでいます。
加藤 脱走の危険とかもありますしね。猫を撮影するときに部屋のセットのふすまを閉めていたので、気を配っていることはわかりました。
内藤 みんなが心を合わせて撮影に取り組むという点でも、猫がいる現場っていいなと思いますね。
加藤 犬だったら指示に従わせることができますよね。でも猫は号令がきかないから犬とはまた違いますよね。
内藤 違いますね~。猫にも芝居というか、ストーリーに関わるアクションが求められることもあるんです。たとえば、向こうからビビが歩いてきて、何か物を倒したことで事件解決のヒントをひらめくとか。ビビ役の黒豆にとってはそれだけ要求される現場なので、そこはストレスにならないようにみんなで気を遣い、ケアしながら取り組んでいます。
加藤 今日も最後に「ニャ~」ってちゃんと鳴いてばっちり決めてて、すごいと思いました。
内藤 まあ偶然もあるんでしょうけどね(笑)。黒豆はけっこう撮影慣れしているので、それがいいように機能しているとは思います。黒豆ががんばってるんだから、人間がしんどいとか言ってられないという思いで、撮影しています。
猫は「ペット」ではなくともに暮らす「生きもの」
加藤 私、ドラマを見ていて、絶対に内藤さんは猫を飼っているんだろうな、と思っていました。抱き方とか猫の扱いがとても自然だし、上手だなと。内藤 ありがとうございます。自宅にも猫が2匹います。ソマリの「チャイ」とロシアンブルーの「ニュイ」です。
加藤 その猫種にした理由は何かあるんですか?
内藤 前に飼っていた猫がアビシニアンだったんです。アビシニアンの長毛種がソマリですから、そのつながりで。ロシアンブルーは本などで写真を見て、興味があったんです。僕じゃなくて家内と娘が決めたものですが、ブリーダーさんとのよい出会いもありましたね。
加藤 2匹は同じ時期に来たのですか?
内藤 そうです。2匹とも今年で9歳になります。
加藤 子どもの頃から内藤さんは猫を飼っていらしたんですか?
内藤 僕は一人っ子なので、寂しくないようにと思ったのか、犬か猫がいつもいました。両親も当たり前のように動物がそばにいる環境で過ごしてきたようなので、僕のこともそういうふうに育てたかったのかもしれません。だから、人間以外の動物が家に一緒にいることは当たり前で自然なんです。
加藤 犬も猫も飼っていたということですが、それぞれの違いってどういうふうに感じていらっしゃいましたか?
内藤 よく犬派か猫派かって言いますけど、どっちが好きかと聞かれるのはあまり好きではないですね。どっちがどうっていうのはなくて、どっちも好きです。僕の中では「ペット」という言葉もなくて、みんな同じ「生きもの」だと思っています。だから、事務所の猫たちと自分ちの猫たちとの違いも特になくて、どちらも僕にとってはかわいい猫たちです。
加藤 ホントに? うちの猫のほうがかわいいとかないんですか?(笑)
内藤 ないですね~。生きものとは、生きて死んでいくものですよね。こっちのほうがかわいいという差をつけないというのはそこにあって、生きもの全体として捉えたときに、自分ちの猫はたまたま今、一緒に暮らしている存在という感じです。だから、我が家では、猫が死んでしまったら、あまり間を空けずにまた次の猫を迎え入れます。