加藤 猫は狭いなわばりでも、その環境に満足していれば十分に暮らせる動物です。上下運動して空間をうまく使うので、そういうスペースがあれば、部屋は倍の広さになりますからね。
假屋崎 はい、キャットタワーや壁に段差はつけてあります。
加藤 犬も猫もそれぞれの相性や性格があるから、すごく仲良くできるケースもあるけれど、できないケースもたくさんあります。プリとリラは、最初にハンスを見たときの恐怖がトラウマになり、受け付けなくなってしまったのでしょうね。猫たちの居場所は、専用の部屋だけですか?
假屋崎 私が留守にしているときには犬たちと遭遇しないように専用部屋の中にいますが、私がいるときには、部屋のドアを開けて、私の寝室など3階の他の部屋にも自由に行き来できるようにしています。ハンスが腰の手術をしてから、階段の上り下りをさせないほうがいいと獣医さんに言われたので、今は犬たちの居場所も1階だけに制限していて、2階以上には行かせないようにしています。
寂しい女は太る、寂しい猫も太る!?
加藤 先ほど、猫の部屋を見せてもらいましたが、猫のトイレ、少し小さすぎませんか。壁に張ってあったペットシーツにもオシッコをしていましたが、トイレを大きくすれば中でするようになると思うので、ぜひ試してみてください。假屋崎 そうでしたか。試してみます。オシッコははみ出したり壁にかけちゃったりするんですが、ウンチはトイレの中でちゃんとしてくれます。
加藤 それはいいですね。猫って足の裏で感じた砂の感触で、「あ、ここでウンコできそうだな」と思うんですよね。だから、無精な猫だと、前足だけが猫トイレに入ってて後ろ足がまだ入っていない状態でも、これでいいと思ってやっちゃうんです。うちの猫がまさしくそれで、お尻がまだトイレからはみ出してるのにしちゃうから、ときどきウンコがトイレの外にポロッと……。だから、私はトイレの横に「もう一歩前へ」って貼り紙したんですが、どうもうちの猫は読めないようなんです(笑)。
假屋崎 アハハハハ。そりゃあ、人間の発想だわね。加藤さん、おもしろーい。
加藤 いつも掃除するのがしゃくだから、ちょっとジョークでやってみました(笑)。假屋崎さんのところは、他に困っていることはないですか? 猫たちの健康状態はどうですか。
假屋崎 うちはリラが肥満になってきたくらいで、他に大きな問題はないですね。
加藤 いやいや、肥満だって大きな問題ですよ。
假屋崎 リラは犬が来てから急に太っちゃったんです。ごはんのせいもあるかな。私、留守がちなので、少し余分にキャットフードを出していくんですが、ちゃんと食べてるみたいで。
加藤 さっき見ましたが、あれは出し過ぎ!
假屋崎 あら~、そうですか。でも、うちの猫はすごくぜいたくで突然食べなくなるんですよ。同じフードをあげているのに。
加藤 そう言う飼い主さんは多いんですが、猫ってそういう動物なんです。飽きっぽいんです。食べたくないときは、食べなくてもいいんですよ。
假屋崎 でもかわいそうじゃないですか~。だから、7~8種類くらい、いろいろなメーカーのものを用意しておくんです。たまにマグロの赤身を細かくしてあげたりして。そうすると、本当においしそうに食べるんです。
加藤 そういうとき、猫ってウミャイウミャイって言いながら食べますよね(笑)。リラの肥満は、運動不足も原因かもしれません。犬たちが来る前は、この広い家じゅうを自由に飛び回っていたのに、それが3階だけになって運動量が減ったことも考えられますね。
假屋崎 それはあるかもしれません。ハンスが来て、最初の1~2年は大丈夫だったんですが、だんだん太りだして。以前はリラのほうがプリよりも小さいくらいだったんです。
加藤 寂しい女は太るっていうけれど、リラの場合はその類かしらね(笑)。
猫的気ままな生活へのあこがれ
假屋崎 でも、プリやリラがうらやましいと思うこともありますよ、私なんか、お休みがなかなかとれなくて、展覧会が始まればずっと缶詰め状態。猫たちはのんべんだらりとしていていいな~、こんな生活をしてみたいとあこがれることもあります。加藤 1日で飽きると思いますけどね(笑)。でも、家でソファに寝転びながら、お腹に猫を乗せてテレビを見ていてくつろぐというのは幸せですよね。
假屋崎 はい。そういう時間も大切にしています。
加藤 假屋崎さんの創作活動で、猫に感化されることって何かありますか?
假屋崎 なんだろう? 作品そのものに、ということではないけれど、猫の優雅さやしなやかさ、かわいらしさを見ていると、気持ちを切り替えられるということはありますね。創作にどっぷりつかっていると、煮詰まってしまい身動きがとれなくなったりするんですが、猫たちとふれ合うと新鮮な気持ちになるので、リフレッシュできます。家に帰ってきて、猫たちの顔を見るとやっぱり癒やされます。声を掛けても「ニャー」くらいしか言ってくれないけど、猫たちにごはんをあげたり、一緒に遊んだり、ゴロンとしたり、犬と散歩をしたり、私にとってはそういう時間が本当に大切なんです。山のようにあるストレスが吹き飛んで元気が出てきます。
加藤 昔は、「たかがペット、されどペット」で、死んじゃっても泣いたら笑われるって感じでしたよね。ペットが死んだときに泣いて許されるのは子どもだけだったように思います。でも、今はペットが死んだので休みますと言ってOKの会社もありますからね。それだけ、かけがえのない存在になっているということですよね。
假屋崎 本当にそうですね。体は小さいのに存在は大きい。なんなんだろうと思いますよ、この猫というものは。